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第303回 ─ CONJURE

連載
NEW OPUSコラム
公開
2008/02/28   22:00
ソース
『bounce』 296号(2008/2/25)
テキスト
文/西尾 洋儀

多彩な音楽をグツグツ煮込んで生まれたNY料理、コンジュアの不思議な味を確かめろ!

  アメリカン・クラーヴェの主宰者であるキップ・ハンラハンは、独自の世界観に基づくサウンドを追求してきたNYジャズ/ラテン・シーンの最重要人物。彼の活動のなかでもひときわユニークなプロジェクトがコンジュアだ。イシュメール・リードの詩に、アラン・トゥーサンやボビー・ウォマック、カーラ・ブレイなどの著名音楽家による演奏を編集して全体を構築していく手法によって作られている。

 さて、その3作目となる『Bad Mouth』は、これまで少量の輸入盤が流通していただけだったが、このたびようやく日本盤がリリースされた。デヴィッド・マレイやレオ・ノセンテリが参加した本作は、ジャズ、ラテン、ニューオーリンズなどさまざまな音楽要素がモザイク的に散りばめられた内容だ。詠唱で幕を開け、フリーキーなギターとグルーヴィーなベースによって除々に熱を帯びていく。その音世界にすっかり引きずり込まれた頃には、クールにリズムを刻むコンガや深遠な響きのリーディングに聴き入ることに。ここには〈音の魔力〉とでもいうべき官能的な味わいがある。そして一度知ると忘れられなくなる濃厚な苦味と甘味こそがコンジュアの魔術。これを機にぜひ触れてほしい。