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第285回 ─ MELLOW BEATS

連載
NEW OPUSコラム
公開
2008/01/24   21:00
ソース
『bounce』 294号(2007/12/25)
テキスト
文/卯之田 吉晴

飽和状態のジャジー&メロウ・ヒップホップに橋本徹が提案する新たなリスニング・マナー

 〈FREE SOUL〉や〈Cafe Apres-midi〉をはじめとするさまざまなコンピ・シリーズを仕掛け、今日までに実に200近いタイトルの監修/選曲を手掛けてきたという恐るべきコンパイラー、橋本徹。最近ではポール・ウェラーやアントニオ・カルロス・ジョビン関連作を監修していたのも記憶に新しい彼が、新たに着手したのはヒップホップだ。その第1弾としてリリースされたコンピ『Mellow Beats, Rhymes & Vibes』ではサウンド・プロヴァイダーズやプロカッションズなどのアンダーグラウンド・ヒップホップから秀曲をチョイス。流麗なピアノの響きを全編に漂わせた心地良いサウンドが印象的で、〈夜のリスニング・ルームに適したヒップホップ・チルアウト〉というコンセプトどおり、ヒップホップの新たな楽しみ方へと多くのリスナーを誘う一枚となっていた。

 そして、その熱も冷めやらぬうちに早くも第2弾となる『Mellow Beats, Rhymes & Visions』が登場した。全体的にピアノ・ループを軸としたサウンドが印象的だった前作に対し、今回はソウルやジャズのゆったりとしたスウィートなグルーヴが心地良いヴァイブを演出している。なかでも〈FREE SOUL〉ファンには馴染み深いフレンズ・オブ・ディスティンクション使いのファンキーDL“Don't Even Try It”や、テイ・トウワ“Luv Connection”と同ネタのプレスト曲などは橋本らしい趣向が窺える逸曲で、作品中のハイライトと言っていいだろう。

 さらに話はそれだけに止まらず、コンピ・シリーズのガイドブック的な役割を担う書籍として、彼が主宰するSUBURBIA SUITE久々の新刊でもある「Essential Mellow Beats」も合わせて刊行されたばかり。かつて〈FREE SOUL〉がそうであったように、巷に溢れるメロウ~ジャジー系のヒップホップがこれを機に新たなリスナーへと扉を開くことになるのだろう。手筈は整った。後はあなた次第だ。