ビル・ラズウェルの新たな実験場に注目せよ!
次頁にて紹介しているナイン・インチ・ネイルズのリミックス盤『Y34RZ3R0R3M1X3D』にも名を連ねるなど、いまもクリエイターとしてバリバリの現役感を有するビル・ラズウェル。NYアンダーグラウンドの要人で、マテリアルを率い、ゴールデン・パロミノスの一員で……というよりも、現在では単に〈難解で偏執的な大物プロデューサー〉という印象が強いのかもしれません。要するに〈よくわからんけど凄い人らしい〉という感じで、彼がリアルタイムで生み出している音楽への認識があまりに薄くない?と思うわけです。ラズウェルが30年間行っているのは〈異質な音楽同士のエクスペリメンタルな交配〉ということになるのですが、セルロイドやアクシオムの音源がポスト・ポスト・パンクやエレクトロの文脈で再評価される時代だからこそ、彼の現在進行形は常に好奇心を傾けるに値するはず! ということで、彼の新レーベル=ナグァルから同時リリースされる3品を紹介しましょう。
まずはラズウェルがサブマージドと組んだエッジーなドラムンベース・ユニット、メソッド・オブ・ディファイアンスの2作目『Inamorata』。前作『The Only Way To Go Is Down』にも参加していた近藤等則をはじめ、馴染みのハービー・ハンコックやファラオ・サンダース、ニルス・ペッター・モルヴェルらを動員し、前作以上にジャズの比重を増したアブストラクト・ドリルン・アートコア(?)に仕上げています。そこにも参加しているファヌーをメインに据えた『Lodge』も同系統で、ダビーというよりエコーと呼びたい真っ白なジャングル感が新鮮かも。で、最後はプラクシスの超豪華な新作『Profanation』。ビル+バケットヘッド+バーニー・ウォーレル+ブレイン(現ガンズ・アンド・ローゼズ!)という編成にDJディスク、マイク・パットン、サージ・タンキアン、ラメルジー、吉田達也、イギー・ポップらの異能ゲストがズラリ! ロック的な意匠にヒップホップやジャングルを溶いた聴きやすいプログレ・グランジ・ジャム・ファンク(?)作品です。〈変態〉や〈鬼才〉が多すぎる音楽シーンですが……たまには本物もいかがでしょう?
▼2008年1月1日に同時リリースされたナグァル作品。