
マリーザ・モンチやマリア・ヒタなど、MPB勢からのアプローチもあって、にわかに盛り上がるサンバ・シーン。リオの一大ナイト・スポットであるラパ地区では、オルケストラ・インペリアルやバンガラフメンガといったブロコ(サンバ・グループ)たちが夜な夜なサンバで踊らせている。
「間違いなくこのムーヴメントに影響されているわ。ラパを文化や娯楽のメッカとして見直しはじめた世代の一人だから」。
そう語るのは、ホベルタ・サー。2005年にアルバム『Braseiro』でデビューし、一躍新世代サンバのディーヴァとなった彼女が、先頃セカンド・アルバム『Que Belo E Estranha Dia Pra Se Ter Alegria』をリリースした。そこではサンバの古典からホドリーゴ・マラニャォンなど若きソングライターの作品までを並列。レニーニとのデュエットという飛び道具もありつつ、伝統に敬意を表したうえで作り込まれた新感覚のサンバが満載で、このシーンを俯瞰し、理解するには最適の一枚だ。
〈あなたにとってサンバとは?〉という質問に、ホベルタはこう語っている。「私たちのルーツであり、ブラジルのどんなリズムにも、またどんなミュージシャンにも影響を与えている原点よ」。そう、サンバを聴かずしていまのブラジル音楽は語れないのだ。