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第279回 ─ eico

連載
NEW OPUSコラム
公開
2008/01/17   14:00
更新
2008/01/17   17:43
ソース
『bounce』 294号(2007/12/25)
テキスト
文/宮内 健

柔らかな風合いの歌声が最高に気持ち良い、会心のポップ・アルバム!


  爽やかな花の香りのようにゆらりと立ち昇っては、澄んだ空の青に溶けていきそうな──アルバム『メルテッド』で聴けるeicoの歌は、周りの空気や時間と溶け合って、すでにそこにあったかのように、心に印象を残していく。

 前作『月夜のギター』がカヴァー曲中心のミニ・アルバムだったので、オリジナル・フル・アルバムとしては約3年ぶりとなる本作。プロデューサーにはDRY & HEAVYやJUNGLE ROOTS BANDなどで活躍する鍵盤奏者の外池満広を中心に、活動初期からの盟友であるReggae Disco Rockers、quasimodeのプロデュースでも知られるMasato Komatsyを中心とするユニット=Slowlyらが参加した。艶やかでシティー・ポップス的な色合いの強かった3年前のアルバム『空の話』と比べると、本作のサウンド指向はラヴァーズ・ロック/ダブにグッと寄ったものと言える。が、やはり真っ先に耳を捉えるのは、eico自身の歌だろう。決して張り上げない、エアリーでカナリーな美しい歌声。自身が紡ぐ詞曲も、日常の感情に合わせてふと湧き出てきたようなナチュラルな魅力を湛えている。そんな歌と言葉の魅力をポップに昇華しているのが、サウンドの要となるレゲエ・テイスト。それは彼女のヴォーカルとメロディーの魅力を際立たせる、最良にして最強のエッセンスとなっている。レゲエの浸透圧が聴き手の心を自然と開き、彼女の歌が携えたポップな美しさを鮮やかに溶け込ませていくのだ。


eicoの2004年作『空の話』(fantabulous)