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第275回 ─ James Taylor

連載
NEW OPUSコラム
公開
2008/01/10   20:00
ソース
『bounce』 294号(2007/12/25)
テキスト
文/北爪 啓之

あの瑞々しい歌声をライヴ盤で堪能しよう!!

 いつまでも清冽でたおやかな歌声。2007年7月に地元マサチューセッツで行われた、歌手活動40年のキャリアを総括するような名曲満載のコンサートをパックしたこのCD+DVD『One Man Band』でも、JTことジェイムズ・テイラーは変わらずに瑞々しくて優しい。もちろんデビュー初期、20代前半に感じられたある種の痛々しさや翳りの表情はここにはないけれど、そのぶん人生の機微を含んで紡がれる歌の数々が――“Fire And Rain”も“You've Got A Friend”も――大らかなのに妙に切なく心に染み入ってくる。

 また最近になって突如リリースされた、70年のロンドンはロイヤル・アルバート・ホールにおける盟友(にしてかつての恋人)ジョニ・ミッチェルとのライヴ音源『The Circle Game』でも、やはりJTのヴォーカルが持つ佇まいは現在とほとんど差異がない。本人の感情や周囲の状況、そして時代が移ろっても変わることのないこのジェントルな歌声こそが彼の最大の魅力であり、唯一無二の〈真にエヴァーグリーン〉なシンガーであることの証なんじゃないだろうか。
▼文中に登場したジェイムズ・テイラーの作品を紹介。