美しい音色が都会の夜空に溶け込んで……
甲子園には魔物が棲んでいると言われるが、日比谷野外音楽堂にも何か棲んでいる。というのも、ここでのライヴはたびたびミラクルが起きるからだ。映像作品としてアーカイヴしているアーティストが多いのも、きっとそういうことなんだろう。で、このたびDVD「KIRINJI PREMIUM LIVE 2007 at 日比谷野外音楽堂」をリリースするキリンジの場合。まだ夏の残り香が漂う9月17日。暮れゆく空の下、野音ならではの〈事件発生〉を期待するなかで始まったステージは、思惑に反して〈淡々と〉といった趣き。新アレンジなどライヴならではのお楽しみもありつつ、野音での彼らは休日のオフィス街に流れる独特の空気感とバンドの呼吸を楽しみながら、のびのびとした演奏を展開していく。語り草になりそうな派手な〈事件〉は起こらなかったが、それでも全22曲を終えた後に込み上げる〈清々しい感動〉は、野音に集まった観客にもたらされたミラクルであり、キリンジの現在を物語るトピックだったと言えるだろう。