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第72回 ─ ソナー・コレクティヴ10周年!

連載
Discographic  
公開
2007/12/13   20:00
ソース
『bounce』 293号(2007/11/25)
テキスト
文/青木 正之、櫻井 誠、出嶌 孝次

ベルリンで産声を上げてからアッという間に10年経ちました! 当初はジャザノヴァによるクロスオーヴァーなジャズ銘柄という認識だったものの、次第に親しみやすく振り幅を広げていき、いまやサウンド・スタイルとは関係なくその名前だけでも支持されるようになったソナー・コレクティヴ。ますます加速していく彼らの足跡を、いまのうちに振り返っておきましょう!

 90年代後半、ジャズをベースにしたクラブ・ミュージックの流れがクロスオーヴァーという渦を作りはじめた時期、ドイツからそこに流れ込んだのがコンポストであり、その看板アクトのジャザノヴァが運営するソナー・コレクティヴだった。ソナーは、95年にベルリンで結成されたジャザノヴァが同郷のDJらと手を結んで、97年に設立された集合レーベルである。なお、ジャザノヴァとコンポストはJCRを共同運営していたが、コンポストとソナーに直接の関係はないので注意が必要だ。

 で、〈コレクティヴ〉というだけあって、当初のソナーは8つのレーベルの集まりだった。エクステンデッド・スピリット(ジャザノヴァの2/6)が運営するダイアログ、ディクソンのリクリエイション、ステファン・ローガルのノー・ゼッション、レゲエ~ダブ専門のベスト・セヴン、2ステップ専科のアスペクト・シャルプラッテン、他にもマーメイド、エアドロップス、ホットドロップが、それぞれに7インチや12インチのリリースを展開し、コンピなどを除けばCD作品はほとんどなかったのだ。

 そんな状況は、さまざまなカラーのブランドを〈ソナー・コレクティヴ〉にほぼ一本化し、アーティスト・アルバムのリリースを活発化させた2003年に一変する(同年にはJCRが解体してジャザノヴァもソナーに移籍)。その変化は初期のジャズ色に固執しない多様性をレーベルにもたらし、ジャザノヴァのアクセルが「ソナーの音楽的な多様性が、自由に音楽を作ろうとする俺たちの精神に刺激を与えてくれる」と語るように、テック・ハウスからネオ・フォークまで広がるソナー世界はいまや内外のアーティストに多大な影響を与えるものとなっている。そんな充実の歳月を経て、レーベルもついに10周年。来年にはジャザノヴァの新作も控えているそうだが……もはやそんな真打ちに期待しすぎる必要がないほど充実した現在の強力ラインナップを、まずは堪能していただきたい。
(出嶌孝次)

▼ディクソン監修のレーベル・コンピを一部紹介。


2000年の『Sonar Kollektiv』(Dialogue/Sonar Kollektiv)

▼レーベル音源を用いたジャザノヴァのミックスCDを一部紹介。

▼ユニークな企画盤を一部紹介。