武藤昭平による、〈憧れのアーティストたちと酒場でいっしょに酒を飲んだら?〉――という深夜の妄想話!
4:00am 〈無表情の監督〉
28時。シェイン・マガウアン(ポーグス)を探しに店に入ってきたジョニー・デップに対して、酔っ払いのシェインは一言。「もう俺につきまとうなよ。参ったな、ジョニー」「そんなこと言うならもうシェイン絡みの作品にギターで参加とか、プロモ・クリップに出演したりしてあげないよ」。まるで子供をあやすかのようなジョニーの態度に、「いやいや、ごめん、ジョニー。俺が悪かった」とシェイン。ふてぶてしい酔っ払いも、ジョニーには弱いらしい。そしてジョニーはわれわれに気遣うことも忘れない。「イギーさんと、ムトウ君だっけ? ホントにごめんなさいね。シェインは本当はイイ奴なんだけど、酔うと気が大きくなって……許してやってください。ところでシェイン、さっきまで誰と飲んでたか覚えてる?」「い、いやぁ」「ジム・ジャームッシュ監督と飲んでたのにもう忘れたの? 監督さぁ、結構付き合ってくれてたのに、シェインがいなくなったから無表情で帰ったよ。無表情の時がいちばん怖いんだよ、あの人」。
「え? ジャームッシュ監督と飲んでたんですか!? 俺、好きなんすよ」と俺が割って入る。「ああ、ムトウ君ってオダギリ(ジョー)君とかと仲良かったよね。監督、オダギリ君に電話してたよ、今日泊めてくれって。そしたらロケに出てるから無理だ、って言われて永瀬(正敏)君に連絡してた。さらに無表情になってたなぁ」とジョニー。「オダギリ君、またロケっすか。いつ家にいるんだろう」。そしてジョニーによるシェインへの説教が止まらない。「あとさぁ、俺たちの隣りの座敷で飲んでた集団を覚えてる? ルーマニア語かなんか、わけわからない言葉をしゃべってた連中。シェインの酔い方がひどくて、彼らに迷惑かけてたみたいでさぁ。シェインが消えたあと、俺たち凄くギャアギャア言われてさ。でも何言ってるかわからなくて、〈スイマセン〉とだけ言っておいたよ。監督はさらに無表情でさぁ」。
すると突然、ジョニーが言ってた集団が店に入って来たのである。男性11人組のその集団がシェインとジョニーを見つけるやいなや、2人を指差し、凄い剣幕でしゃべり始めた。でも何を言ってるのかわからない。「お前ら! 何が言いてぇんだ!」とケンカ腰のシェイン。いつの間にかイギーや俺もその中に巻き込まれる。
……武藤昭平、あくまでも妄想の話。
深夜28時の妄想盤
STRAIGHT TO HELL 『Soundtrack』 Enigma/Big Beat(1987)
ジム・ジャームッシュさんとシェイン・マガウアンさんが役者として顔を揃えた、アレックス・コックス監督のウェスタン・ムーヴィーのサントラ盤。ポーグスのジェム・ファイマー(バンジョー)が監修し、ポーグスのナンバーを10曲も収録した酔いどれな一枚です。
オダギリ ジョー 『WHITE』 ビクター(2006)
ジム・ジャームッシュ好き同士ということもあって、親交の深いムトウさんとオダギリさん。役者としてはもちろん、2006年にはインスト盤と歌モノ盤という2枚のアルバムを同時に発表(本作はその歌サイド!)するなどご多忙のようですが、たまには当店にも顔を出してくださいね!
PROFILE
武藤昭平
ジャズとパンクを融合させたオリジナルなサウンドで人気を博す伊達男音楽集団、勝手にしやがれのドラマー/ヴォーカリスト。カヴァー・アルバム『LET'S GET LOST』(エピック)や、マンスリー・ライヴが話題沸騰中。次回は12月21日(金)にLIQUIDROOMでSUEMITSU & THE SUEMITHを迎えて開催するとのこと。またライヴ会場限定リリースのシングル〈Instant Session〉シリーズもスタートしたばかり。詳しい情報は〈www.katteni-shiyagare.com〉で!