良質かつ革新的なアーティストを輩出し、メジャー・シーンのなかで独自のポジションを築いてきた〈ロック系レーベル〉の15年をプレイバック!
メジャー資本なのもさることながら、ロック人気が低下していた92年の設立当時に〈ロック系レーベル〉という挑戦的なコンセプトで始まったスピードスター。設立当初より、泉谷しげる、SHEENA & THE ROKKETSといったヴェテランや、レピッシュ、The ピーズ、FLYING KIDSといった若手まで、その大意に適った良質なアーティストを送り出していた。クラブ・ミュージックと密接な音楽がメインストリームに浸透した90年代中盤~後半には、UA、Cocco、TOKYO No.1 SOUL SETなど、流行りに乗って登場した歌姫やラップ・ユニットとは一線を画したアーティストを送り出し、以降も、くるり、THE BACK HORN、髭(HiGE)など、特異な存在感を放つロック・バンドを輩出。その高い信頼性をもって、メジャー傘下のレーベルとしては希有な存在感を誇っている。そんなスピードスターの15年をざっくり振り返ってみよう!
▼スピードスターが今年輩出した最新のホープを紹介。
Jungle Smile 『夏色シネマ』(1999)
殺伐としたジャングル(都会)でも笑顔でいられるように……との想いをその名に込めた2人組。奥深い心情を切実な歌声で紡ぐその歌は、親しみやすいポップスとして仕上げられていながらも、聴き手を熱くする強い意志に漲っている。
TOKYO No.1 SOUL SET 『9 9/9』(1999)
そのサウンドから滲み出るのは、ロックが本来持ち得ていた〈フリー・フォーム〉な佇まい。ヒップホップと呼ぶには〈ハミダシ者〉だった彼らが、あれやこれやの道のりを経てスピードスターに辿り着いたのも納得がいく話だと。
THE MAD CAPSULE MARKETS 『OSC-DIS』(1999)
ミクスチャー、デジタル・ハードコア、デス・ヴォイス――日本国内の音楽シーンでは海外同様に受け入れられることが難しかった音楽スタイルを、見事メインストリームのド真ん中に響かせていった武者たちだ。
斉藤和義 『COLD TUBE』(2000)
「ポンキッキーズ」のテーマ曲“歩いて帰ろう”ほか、デビュー当初からTV番組のテーマ曲などで並みならぬメロディーメイカーぶりを見せていた彼。99年のスピードスター移籍以降は、派手さを控えながらも、より逞しい作品を重ねていく。
SHEENA & THE ROKKETS 『ROCK THE ROCK』(2000)
ロック不遇の90年代初頭に立ち上がったスピードスターと、70年代後半から君臨し続ける〈ジャパニーズ・ロックの良心〉がコミットしたのは必然か。ちなみにオリジナル・アルバムとしては本作が最新作。
キセル 『夢』(2001)
くるりとは立命館大学の先輩後輩にあたる、辻村兄弟による宅録系フォーク・ユニット。海外のネオ・サイケ・グループともリンクするような浮遊感漂うサウンドと、はっぴいえんどにも通じるノスタルジーとユーモアを孕んだ詞世界が秀逸である。
つじあやの 『恋恋風歌』(2003)
レーベル・カラー的には、一見違和感を感じさせるアーティストだが、いにしえのロックやフォークからも滋養を授かったであろう奥深いメロディー・センスには、見た目とは似つかわしくないタフさがある。本作はお馴染みの“風になる”も収録。