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第241回 ─ HELLO, HOW ARE YOU, LEGENDS OF CANTERBURY!?

連載
NEW OPUSコラム
公開
2007/11/01   22:00
ソース
『bounce』 292号(2007/10/25)
テキスト
文/冨田 明宏

カンタベリーが生んだ2人の天才、ケヴィン・エアーズとロバート・ワイアット。彼らの放った素晴らしい新作を聴き比べてみよう!

自由な生き様をサウンドに反映させるケヴィン・エアーズ!

 いまから40年ほど昔、英国はカンタベリーでのこと。サイケからジャズ・ロックに移行し、真にプログレッシヴなサウンドを展開していたソフト・マシーンという伝説的なバンドに、ふたりの天才がいた。ひとりは後に不慮の事故でドラマーから歌い手に転進するロバート・ワイアット。そしてもうひとりが孤高の〈自由人〉、このケヴィン・エアーズだ。彼は〈長期ツアーなんか嫌だ〉と駄々をこねてバンドを脱退。その直後、イビザ島に逃げ込んでしまう。しかし彼の逃避癖はその時に始まったものではなく、イビザ島への引きこもりはこれで2回目だし、16歳の時にも高校を退学して各地を放浪している。要するにそういう人なのだ。彼の牧歌性と前衛性が融合したソロ作品は現在でも色褪せず、その熱い支持は世代を問わない。

 そんなエアーズがこのたび15年ぶりとなるニュー・アルバム『The Unfairground』を完成させた。今作の参加アーティストは旧友のブリジット・セント・ジョンからティーンエイジ・ファンクラブ、アーキテクチャー・イン・ヘルシンキやキャンディ・ペインなど普通では考えられないラインナップ。黄昏が滲むゴールデン・ポップスに、郷愁感を誘う弦アレンジが心地良い。脱力加減も絶妙な大人の渋味に、往年のファンも溜飲を下げることだろう。カンタベリーの生んだ偉人が放った新作は、芳醇なカンタベリー・ロックの歴史がいまもなお続いていることを如実に物語っているのだ。

▼『The Unfairground』に参加したアーティストの作品を紹介。

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