武藤昭平による、〈憧れのアーティストたちと酒場でいっしょに酒を飲んだら?〉――という深夜の妄想話!
02:00am 〈イギーさん、小っさかったっすよ〉
26時、結局一人で飲み直し。店員のおネェちゃんにちょっかいを出しながら楽しく飲む。「よかったら一杯飲む? おごってあげるよ」「あ、一応仕事中なんで……すいません」「この前、トム(・ウェイツ)さんは飲んでたよ」「でも、あの後に店長からすごく怒られてましたよ、トムさん」「ふーん」。シラケ顔な俺。
そんな時、見覚えのある顔が店に入ってきた。「おう、ムトウ。やっぱりいたか。この間は悪かったな。今日はデヴィッド(・ボウイ)は来てないよな?」。またイギー・ポップである。続けてイギー「さっきまで〈LONDON NITE〉に遊びに行ってたんだ。なぜムトウは来なかったんだ?」「あ、今日〈ロンナイ〉でしたっけ?」「(大貫)憲章が寂しがってたぞ。で、今日も大変だったんだよ」「また何かあったんスか?」「ああ、〈ロンナイ〉に来ていたジョニー・サンダースとシド・ヴィシャスが花園神社でケンカしてさぁ」「は?」「それをTHE MODSのベースの北里が止めてたんだ」「あぁ、行かなくてよかった」「何しろケンカの発端は、ジョニーが北里に〈俺のバックでベースを弾かないか〉って誘ったところを断られて、ジョニーが腹いせにツバ吐いてたシドに言いがかりつけたらしいんだ。ジョニーもシドもあんな事やってたら早死にするぞ」。
俺としては関わりたくない話だったので話題を変えてみた。「イギーさん、今年の〈フジロック〉はやりすぎじゃないっすか? “No Fun”でステージに客を上げすぎでしょう? ライヴ中断したし」「バカ。あれが俺の持ち味だ」「ちなみに2003年の〈フジロック〉でも“The Passenger”で客を上げてたでしょ? あの時も今回もイギーさん、小っさくなってたんですけど」「小っさくなったというか、みんな俺を触りたがるんだ。気持ちはわかるが、それがだんだん俺を叩き出すわけさ。痛いのよ、背中とか。俺はプロレスラーとかじゃないし」「〈フジロック〉のスタッフとかアナウンスして客をステージから下ろして、その最中にイギーさんが〈みんな落ち着いてくれ~。Take It Easy~!〉っつったって、原因を作ったのはイギーさんっすよね?」「……」。
ちょっと俺がイギーさんを責めていると、とってもひどい酔っ払いが店に入ってきた。ポーグスのヴォーカリスト、シェイン・マガウアンだ。
……武藤昭平、あくまでも妄想の話。
深夜26時の妄想盤
THE MODS 『FIGHT OR FLIGHT』 エピック/39 minutes(1981)
ギンギンのロックンロールを詰め込んだこのデビュー作で、瞬く間にシーンの頂点に駆け上がった福岡出身の4人組。ライヴで“Born To Lose”のカヴァーを披露するなど相当なジョニー好きにも関わらず、御大からの誘いをきっぱり断るあたりに北里さんの男気を感じますな~。
IGGY & THE STOOGES 『The Weirdness』 Virgin(2007)
ストゥージズとして新作を発表し、〈フジロック〉に参戦したイギーさん。今回もマッチョな身体をムキ出しにして大暴れしてくれたようですね。今宵は〈ロンナイ〉後のご来店でしたが、そういえば前の奥さんを連れて初めて遊びに来てくれた夜も〈ロンナイ〉帰りでしたっけ。
PROFILE
武藤昭平
ジャズとパンクを融合させたオリジナルなサウンドで人気を博す伊達男音楽集団、勝手にしやがれのドラマー/ヴォーカリスト。バンド結成10周年を記念したカヴァー・アルバム『LET'S GET LOST』(エピック)や、そのアルバムと同名のマンスリー・ライヴが話題沸騰中。次回は中山うりをゲストに迎えて10月28日に東京・LIQUIDROOMで開催するとのこと。ぜひとも会場に足を運んでみてください! その他の最新ニュースは、〈www.katteni-shiyagare.com〉でいますぐチェック!