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第216回 ─ Joni Mitchell

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NEW OPUSコラム
公開
2007/09/27   04:00
更新
2007/09/27   17:29
ソース
『bounce』 291号(2007/9/25)
テキスト
文/桑原 シロー

まさかの(orやっぱり)引退宣言撤回を経て、新作を発表したジョニをみんなで出迎えよう! 


 ジョニ・ミッチェルが5年ぶりの新作をリリース!――などとあっさり言えやしない。2002年、商業主義に走りすぎている音楽業界に嫌気がさしてレコーディング・アーティストとしての引退を宣言した彼女。ただ、その発言をシリアスに受け止めなかった人は少なくないと思う。だって、ジョニのことだもの。〈創作意欲が湧き出してきた時には、きっとカムバックするはずだ〉と。で、〈ほらね!〉って結果となり、いまはにこやかな気分でニュー・アルバム『Shine』を握り締めている。なお、リリース先のレーベルはポール・マッカートニーの最新作『Memory Almost Full』を発表したばかりのヒアーで、ジョニはそこの第2弾アーティストとなった。ちなみに3人目はジェイムズ・テイラーらしい。

 さて、この『Shine』だが、〈ジョニはジョニである〉という至極あたりまえのことを再認識させられる内容だ。ダークさとライトさが入り混じった音の感触は、94年作『Turbulent Indigo』に近い感じがするが、〈ここの部分はジャズっぽくて……〉などと細かく分析することがためらわれるほどの稀有なハイブリッド・サウンドを展開している。このブランク期間にジョニの音楽エッセンスを取り込んだ女性アーティストが多数登場したが、彼女たちのファンも〈へぇ~、ここが源流ね〉と納得することは間違いないだろう。瑞々しい“Big Yellow Taxi”のリメイクやジェイムズ・テイラーが参加したスピリチュアルな大曲“Shine”などが聴きものだ。

 それと時期を同じくして、ジョニの盟友でもあるハービー・ハンコックが彼女のトリビュート・アルバム『River:The Joni Letters』を完成させた。ウェイン・ショーターやデイヴ・ホランドらと共にアコースティックなジャズ・スタイルでジョニの名曲を料理する内容だが、参加ヴォーカリストが凄い。ノラ・ジョーンズやコリーヌ・ベイリー・レイ、ファイスト、ルシアーナ・ソウザといった歌姫たちに、レナード・コーエンやティナ・ターナーを加えたラインナップ。で、なんとジョニ本人も1曲参加しているのだ。ただ豪華なだけではない、深いジョニ音楽の渓谷に下りて行こうとする参加者の心意気が感じられる良質作で、こちらも必聴!

 バレエ作品の芸術監督を行ったり、ヴィジュアル・アートの展覧会を開催したり、今年は精力的な活動を展開するジョニ・ミッチェル。そのアクションからは〈バリバリ〉というサウンドが聞こえてきて、本当に頼もしい限り。その延長で来日を期待してもいい?