NYラテン・シーンを騒がすバチャータの貴公子トビー・ラヴ。で、バチャータってなあに?

1年ほど前だろうか、クールなバチャテーロ(バチャータ歌手)が出てきたとラテン・リスナーたちの間で評判になったのは。輸入盤屋でもかなりのセールスを記録し、サルサ・バーでも頻繁にプレイされていたのだが、その話題の男であるトビー・ラヴのアルバム『Toby Love』がようやく日本盤でリリースとなった。
まず、彼のキャリアをお話しよう。NY生まれのプエルトリカンである彼は音楽一家に生まれ育ち、まずはパーカッションを始める。16歳の時、いまや飛ぶ鳥を落とす勢いのアーバン・バチャータの代表格、アヴェントゥーラの〈表には出ない〉メンバーとなる。グループには約6年在籍して、シーンの仕掛け人としての確固たる地位を築き、その後ソロ活動をスタート。デビュー・アルバムとなる本作の全体を占めるのはもちろんバチャータ(クランクチャータ=クレイジー+ドランクとも言う)だが、スペイン語と英語をミックスし、R&B~ヒップホップなどのサウンドを詰め込んだアーバン・ソウルのラテン版と言った趣きで、マスターズ・アット・ワークが提唱した〈ニューヨリカン・ソウル〉とは異なる、NYに暮らす今のラテン人の音を聴くことができる。
さて、バチャータとはどんな音楽か? ドミニカ共和国にルーツを持つ〈キンキンテケテケ〉と鳴るレキント・ギターが特徴の田舎っぽさの残る音楽であり、〈ドミニカのブルース〉と呼ばれたりもする。以前は酒場の音楽だったが、90年頃からフアン・ルイス・ゲーラが斬新なアレンジを施したヒット曲を連発し、一気にメジャーな音楽へと押し上げた。そして、このバチャータは振り幅の広さを利用して、90年代後半からメレンゲやレゲトンと融合して進化する。特に2000年代に入り、移民の街NYから発生したアーバンでポップなバチャータは世界的なヒットを記録。そのリーダー的存在がアヴェントゥーラだ。一方、彼らやトビー・ラヴも敬愛するアントニー・サントスのような、カリビアンのアフロネスを撒き散らしながらドミニカ人の誇りを歌い続けるローカル・スターも多く存在する。
なお、今回アヴェントゥーラなどのアーバン系から新興歌手のサカリーアス・フェレイラ、ヴェテランのアレックス・ブエノまで収録したコンピ『We Love BACHATA』もリリースされた。こちらはバチャータの入門編としてどうぞ。

アンソニー・サントスの97年作『Como Te Voy A Dejar』(Platano)