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第184回 ─ HEART OF GOLD

連載
NEW OPUSコラム
公開
2007/08/16   17:00
更新
2007/08/16   17:37
ソース
『bounce』 289号(2007/7/25)
テキスト
文/桑原 シロー

風格と落ち着きを湛えた、ニール・ヤングのライヴ・ムーヴィーが登場!!


 スポットライトに浮かぶハット姿のニールに、〈まるで映画みたいだ〉と見惚れてしまう。で、〈おっとこれは映画だった〉と思い返すことが2~3回あったっけ。ファンの間でずっと公開祈願運動が続いていたニール・ヤングのライヴ・ムーヴィーが、このたびDVDでリリースされることになった。タイトルは、70年代を代表するアルバム『Harvest』の収録曲でもある〈ハート・オブ・ゴールド〉。また、その邦題〈孤独の旅路〉が本DVDのサブタイトルとして甦っている。

 2005年8月、アルバム『Prairie Wind』制作後にナッシュヴィルで行われたライヴが収められているのだが、 レコーディングにも参加したベン・キース、スプーナー・オールダム、そしてエミルー・ハリスなど豪華メンバーが舞台上にズラリと集結し、素晴らしい演奏を繰り広げている。監督はジョナサン・デミ。彼はこのドキュメンタリーにサイド・ストーリーなどを設けず、舞台上のニールにカチッとピントを合わせ、音楽にじっくりと向き合う姿からこれまでの輝かしいキャリアをあぶり出そうと試みている。そしてニールもまた、まるで自分の手のひらの皺をじっと眺めるような感じで、滋味深い歌を披露していく。この落ち着きぶり、感傷的なムードは、過去の映画作品「ラスト・ネヴァー・スリープス」や「イヤー・オブ・ザ・ホース」には表れていなかったもので、当然それらの映像の趣きとはかなり異なる。この年の春、ニールに動脈瘤が見つかるというショッキングなニュースが世界中を駆け巡った(このライヴの時期に体調は回復していた)。その件がこの映画作りにかなり影響を与えていたであろうことは、容易に想像できる。とにかく、腰を落ち着けてゆったりと鑑賞できる作品で、格調高い映画に仕上がっている。次はふたたび爆音映画か?
▼ニール・ヤングの作品を紹介。