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第129回 ─ 不思議な楽団、ペンギン・カフェ・オーケストラの音楽がみんな大好き!!

トリビュート盤のプロデューサーが語る、ペンギン音楽の魅力

連載
360°
公開
2007/08/16   17:00
ソース
『bounce』 289号(2007/7/25)
テキスト
文/ダイサク・ジョビン

 ベスト盤と同時リリースされるトリビュート盤『PENGUIN CAFE ORCHESTRA -tribute-』。自身も参加し、プロデュースを手掛けたのが、ボサノヴァ・デュオのnaomi&goroやサントラ制作などで活躍する伊藤ゴロー。昨年、MOOSE HILL名義でリリースしたソロ作『DESERT HOUSE』では、ペンギン・カフェ・オーケストラにも通じる弦楽器主体で映画音楽的な、アカデミックすぎずポップすぎずといった風通しのいい音楽を聴かせてくれた。
「全然意識はしてなかったけど、ペンギン・カフェの音楽にある〈何とも言えない何か〉――聴き込む感じでもない〈どっちつかずな感じ〉の影響はあるかもしれない」。

 さて、トリビュート盤のきっかけは何だったのだろうか?

「ここ数年ひとりでやってるアーティストがたくさんいて、彼らの音楽を聴いているとペンギンに通じるものがあって。さらに教授をはじめ、当時彼らと交流があった人たちにもやってもらえたらスゴくおもしろいだろうな、ってずっと思ってた」。

 数多くのペンギン・ファンのなかから「早い者勝ち」で決まったという今作の参加アーティストは、坂本龍一+高田漣、高橋幸宏、HAAS(a.k.a.高野寛)といった最近その活動に大きな注目が集まるHASYMO(Human Audio Sponge~YMO。残念ながら細野晴臣はスケジュールの都合で不参加)周辺をはじめ、嶺川貴子、KAMA AINA、高木正勝など、独自のセンスを持つエレクトロニカ~インスト・ミュージックを奏でる音楽家たち(全12組)で、どの楽曲も個性的で愛情溢れるカヴァーとなっている。また、「悩むのがイヤだったから発表年代順にした」という曲順ならびに収録曲は、ベスト盤もトリビュート盤もまったく同じという構成もおもしろい。最後に、現在も数多くのアーティストにインスピレーションを与え続けている彼らの魅力について、音楽家としての視点から語ってもらおう。

「名前やアートワークも含めてその存在自体にスゴく惹かれるっていうのがいちばんだけど、どの曲も個性的だからまさにアイデアの宝庫。日常にあるものを楽器として使っちゃうっていうアイデアにも勇気づけられるし、自分で何か見つけて自分で何かやればいいんだってところに立ち返ることもできる。無理に計算しなくても自分の音楽になる――それでいいんだって、いつも彼らの音楽を聴いて確認してるかな」。