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第183回 ─ Kelly Clarkson

連載
NEW OPUSコラム
公開
2007/08/09   18:00
ソース
『bounce』 289号(2007/7/25)
テキスト
文/村上 ひさし

本格派のロック・シンガーへと急成長を遂げた、気合いの一撃を喰らいなさい!!


  過去2作のトータル・セールスは全世界で1500万枚を突破。もはや〈アメリカン・アイドル〉出身を引き合いに出すまでもなく、世界のポップ・クイーンとして君臨しているケリー・クラークソンは、アヴリル・ラヴィーンやピンクらと共に〈ロックのエッジを持った痛快ポップ〉という分野を開拓してくれた。そんな彼女が本格的なロック・シンガーへの脱皮を図ろうとしているのが、この3作目。な、なんとおっさんロッカーのマイク・ワット(ミニットメン)がベースで参加していたり、プロデューサーにはポール・マッカトニーからサブライムまでを幅広く手掛けるヴェテラン、デヴィッド・カーンを起用というのでビックリ。さらにケリー自身が全曲で曲作りに関わっているのだから、いかに彼女が本腰を入れて取り組んだかが窺い知れるだろう。以前のようにアヴリルやクリスティーナ・アギレラのペンに頼ることもなければ、ダイアン・ウォーレンやカーラ・ディオガルディら売れっ子ソングライターとも訣別。ジョン・シャンクスやマックス・マーティンら人気プロデューサーの姿も見当たらない。その代わりに、まるで体当たりでぶつかりますと言わんばかりの迫力で突き上げてくるのがケリーの歌だ。ふんだんにシャウトを盛り込んで、ロック魂をぶちまける。とはいえ、あくまでも〈ロック寄りのポップ〉から〈ポップ寄りのロック〉へとシフトといったニュアンスなので、ついつい出ちゃう持ち前のアゲ系ポップ魂も健在。そこは、やはり譲れない。