8月12日(日)の東京会場に出演するアーティストの作品を紹介
2日目のヘッドライナーは、いまや飛ぶ鳥を落とす勢いのアーク・ティック・モンキーズ。そんな若手に負けじと〈SONIC STAGE〉を盛り上げてくれるであろう、ペット・ショップ・ボーイズやシンディ・ローパーなどのベテラン2組も見逃せません。また、〈MARINE STAGE〉のブロック・パーティー、〈MOUNTAIN STAGE〉のエンター・シカリ、〈DANCE STAGE〉のサンシャイン・アンダーグラウンド、ロック寄りの新作を発表したばかりのアンクルなど、この日は踊れるロック系のアーティストが目白押し。お祭りムード満点の一日になりそうです!!
ARCTIC MONKEYS
『Favorite Worst Nightmare』Domino/HOSTESS(2007)
まさかあれほど愛したアークティック・モンキーズのデビュー作を、あっさり超えるほど好きになれるセカンド・アルバムを作るとは。そんな奇跡を、この4人の場合はあきらかな〈変化への意志〉と共に生み出した。ありえない。デビュー当時のインタビューで、「流行とは離れた場所で常に新しい音を作りたい」と話してくれたヴォーカルのアレックス・ターナー。その言葉どおり、このアルバムはどれをとっても現在のUK&USで鳴っているサウンドとは違う。ダイナミズム上等!なドラムは多彩なリズムを展開し、ギターは時にヘヴィーに、時に空間を活かし、華やかさを加える。カウンター・メロディーとして鳴るベースも通常のギター・ロックにはありえない存在感を持つし、そもそも曲の構造そのものが〈ポップ・ミュージック〉の常識を気持ち良く無視。そのすべてをアレックスによる言葉数の多いメロディーラインが先導する、その総合力こそが奇跡的。「生まれ変わるんじゃなくて、前に進んで進化する能力を持っていること。進化するのを恐れないということ。そしてポップ・ミュージックなんだけど、深みのあるおもしろいポップ・ミュージックを作りたいということ、かな」――このアルバムを完成させて気付いたという〈自分たちらしさ〉について問うと、アレックスはそう答えた。いまも変わらず冷静に、自分を見つめる彼。この回答こそがその内容のすべてを伝えている一枚だ。(妹沢奈美/bounce 2007年05月号掲載)
UK/USを中心に爆発的な盛り上がりを見せていたニュー・レイヴ・リヴァイヴァルが尻すぼみ状態となり、終焉へと向かっていた2005年下半期。そんなシーンの重苦しい空気をたった一枚のEPで吹き飛ばし、全世界をあっと言わせたのがアークティック・モンキーズだ。インターネット上での口コミから火が着いて、翌年にリリースしたデビュー・アルバムをあっさりチャート1位に放り込み、オアシス以降のUKで最大のバンドとなった……と、ここまで夢物語のような快進撃を続けてきた彼らが、1年半というインターヴァルを経て待望のニュー・アルバムを完成させた。血管沸騰必至のビートと瞬発力抜群のアークティック節は今作でも健在だが、同時にハード・ロック的な要素が加わるなど革命的な変化も遂げている(デビュー前に彼らはダットサンズのコピーをしていたり、ギターのジェイミー・クックがシステム・オブ・ア・ダウンの大ファンとのことなので、この変化には大いに頷けるのだが……)。ひとつ戸惑う点は、前作での“Fake Tales Of San Francisco”や“I Bet You Look Good On The Dancefloor”のようなキラー・トラックがないところ。ありったけのフックを前面に押し出した前作とは違い、今作はあきらかに聴き手にさまざまな発見をさせようとしている攻撃的かつ実験的な作品で、なるほど、聴くたびに新たな表情を見せて彼らが現在やりたかったことが少しずつ浮き彫りになっていく。つまり、ほっぺにニキビの残る少年たちが作ったとは到底思えない挑戦的な傑作なのだ。〈夢物語〉はこうして伝説への階段を登りはじめた! (白神篤史/bounce 2007年05月号掲載)
KASABIAN
『Empire』SonyBMG UK/BMG JAPAN(2006)
2004年の〈サマソニ〉ではアルバム・デビュー前にも関わらず、入場規制になるほどの観客を集めたという伝説を持つ彼ら。エラく型破りなファースト・アルバムに続く2年ぶりの新作は、不機嫌な破壊的暗黒ビートで攻めるエレクトロ・ノイズと生音の融合はそのままに、アコギやストリングス、果てはトランペットで味付けしたドラマティックな展開を披露。〈さらに我が道を開拓した!〉と高笑いする彼らの姿が目に浮かぶ出来です! (加藤直子/bounce 2006年09月号掲載)
BLOC PARTY.
『A Weekend In The City』V2(2007)
ブロック・パーティー、覚醒! デビュー・アルバムで〈衝動〉という名の剣を振りかざしていた彼らは、この2作目で葛藤/不安/虚脱、そして世界情勢や人種差別など氾濫する数多くの〈やるせなさ〉を緻密に切り取り、荘厳な世界を紡ぎ出してみせた。前作に比べると刺激的なグルーヴ感は影を潜めているものの、感情の起伏を感じさせる音の展開は、鼓動が激しくなるほどにスリリング。これは〈現実〉という名の生々しい一大絵巻だ! (柴田かずえ/bounce 2007年03月号掲載)
THE OFFSPRING
『Greatest Hits』Columbia/ソニー(2007)
〈アハ~ンアハ~ン〉な“Pretty Fly”をはじめ多くのヒット曲を生み出したオフスプリングによる初のベスト盤! エピタフからのサード・アルバム『Smash』でインディー史上最高の1,200万枚という驚異的なセールスを記録し、その後も2003年作『Splinter』までコンスタントに作品を発表してキッズを喜ばせてくれる彼ら。今年の〈ワープド・ツアー〉でのヘッドライナーも決定し、冒頭を飾る新曲もオフスプ節全開で文句ナシ! (鈴木健文/bounce 2005年07月号掲載)
AVENGED SEVENFOLD
『City Of Evil』Warner Bros./ワーナー(2006)
ここまでロック・スターになってしまうとは! かつてベルギーのハードコア・レーベルからリリースしていた面影はどこへやら、ガンズ・アンド・ローゼズとX-JAPANを足して、今時のメタル・コアとスクリーモのフィルターを通した確信犯的サウンドを奏でる彼らのメジャー・デビュー作。しかし、この完成度の高さは異常! もはやオペラにも近い超大作で、歴史的名盤級の仕上がりだ。ま、要は開き直ったモン勝ちってこと? (菅原 亮/bounce 2006年07月号掲載)
MOTORHEAD
『Kiss Of Death』Steamhammer/ビクター(2006)
暴走列車の片道切符を握りしめ、走り続けて30年。60歳を越えてなおロック野郎のシンボルとして君臨し続ける男=レミー・キルミスター率いるモーターヘッドが、18枚目となる新作を発表。ジャック・ダニエル焼けした艶声とバックを固める燻し銀のプレイに唸り、 “Sucker”や“Trigger”をはじめとする灼熱のロックンロール・チューンに卒倒! 〈帰りの切符なんていらないゼ〉という気合いの入った野郎どもは、迷わず飛び乗れ! (寺島正夫/bounce 2006年10月号掲載)
PET SHOP BOYS
『Fundamental』Parlophone/東芝EMI(2006)
ペット・ショップ・ボーイズの新作はトレヴァー・ホーンがプロデュース!ってことは……そう、ふたたび全盛期のような極上ディスコ・ポップへと回帰したのだ! バンザ?イ! 80'sムードをギンギンに盛り立てるトレヴァー印の大袈裟なサウンド演出と、それに負けじと繰り出される泣きメロの応酬に、みんなたまらず泣き踊り。エレポップ界の王者同士による最強タッグだからこそ作り得た最強のアルバムがここに誕生した! (田中幹也/bounce 2006年06月号掲載)
コーネリアス
『SENSUOUS』ワーナー(2006)
コーネリアスによる5年ぶりの新作――そのタイトルは『SENSUOUS』。意味を知らなかったので辞書を引いてみると、〈感覚的な/美的な〉ということらしい。その単語をじっと眺めていると、文字の配列からしてデザインされたような美しさを感じるが、そんな見事なフォルムは本作にもある。前作『Point』では、切り詰めた言葉と音で精密な余白を作り出していたが、本作はその路線をさらに突き詰めた仕上がりになっており、アコースティック・ギターのさざ波に導かれて、研ぎ澄まされた音響パズルを展開していく。キングス・オブ・コンヴィニエンスをゲストに招いた “Omstart”、ソリッドなギターが鳴り響く“Gum”、DAFばりのシンセがウネる“Beep”など、さまざまなスタイルを引用しつつも、彼方に浮かび上がるハーモニーはしなやかで、何よりもパワフルだ。まるで栄養たっぷりのミルクみたいに、無垢で濃密な46分49秒(ヨロシク)。(村尾泰郎/bounce 2006年11月号掲載)
DJ SHADOW & CUT CHEMIST
「Freeze」Pllage Roadshow(2006)
DJシャドウとカット・ケミストという希代の7インチ馬鹿による、2000年1月のLAにおけるDJミックス・セッションを収録したDVD。激レアなディープ・ファンク盤だらけの選曲で、コレクターは卒倒必至だ。コスリと2枚使いで紡がれるこのカッコ良さたるや、空前絶後&問答無用です! (石田靖博/bounce 2006年06月号掲載)
UNKLE
『War Stories』Surrender/TRAFFIC(2007)
忘れた頃にやってくるジェイムス・ラヴェルのプロジェクト=アンクルが、レーベルも装いも新たにしてニュー・アルバムをリリース。モ・ワックス時代よりずっとアートワークを手掛けてきたフューチュラから3D(マッシヴ・アタック)にデザイン担当が変わり、音のほうもいっそうロック色を増強。キュアーのイアン・アストベリーが参加していたり、ジェイムス自身のヴォーカルが入った楽曲もあったり、ヤル気満々ですな。(池田謙司/bounce 2007年07月号掲載)
THE SUNSHINE UNDERGROUND
『Raise The Alarm』City Rockers(2006)
間違いなく今年下半期のUKロック・シーンの顔になるであろうリーズ出身の4人組、サンシャイン・アンダーグラウンドがデビュー作をリリース。ラプチャー直系のディスコ・パンクあり、ニュー・オーダーやキラーズを彷彿とさせるメロウでニューウェイヴィーなキラー・トラックあり……と言ってしまうとありきたりだが、すべての曲を聴き終えた後に残る昂揚感は、今後の飛躍を確信させてくれる。とにかく凄い作品だ。(白神篤史/bounce 2006年10月号掲載)
TILLY AND THE WALL
『Bottoms Of Barrels』Team Love/V2(2006)
〈ドラムの代わりにタップがリズムを担当!〉と聞いた時、驚くよりも先に苦笑が漏れてしまった。まったく、俺はなんて浅はかで失礼なヤツなんだろう。元ブライト・アイズのメンバーを含む男女5人組、ティリー・アンド・ザ・ウォールのセカンド・アルバムが本当に凄いのだ! 前述のとおりタップ、そしてハンドクラップで刻まれるリズムは仄かにフォークロアなムードを演出し、従来の打楽器では決して生み出せない小気味良く繊細なビートを響かせる。フォーク、カントリー、ブルーグラスにネオアコ、ソフト・ロック……と、次々と変化する楽曲に合わせてタップも目まぐるしく変化。そしてタップの効用か、笑い声が聴こえてきそうなメンバーの楽しげな雰囲気がナチュラルな昂揚感を生んでいる。斬新なアイデアと至高のメロディーが高らかに踏み鳴らされた、2006年インディー・シーンを象徴する作品である。(冨田明宏/bounce 2006年10月号掲載)
BEN WESTBEECH
『Welcome To The Best Of Your Life』Team Love/V2(2007)
UKはブリストルを拠点とする25歳の新鋭クリエイターがアルバム・デビュー。ジャイルズ・ピーターソン主宰のブラウンズウッドから、という背景も頷ける幅広いサウンド表現が何よりの魅力だ。ジャズやソウルをベースとしながらもハウスやドラムンベースなどのダンス・ミュージックを乗りこなし、さらには生活感に溢れた言葉を伝えるポップ・シンガーとしての力量も発揮。新人らしからぬマルチな才人ぶりに、今後も要注目! (ネイシャン/bounce 2007年04月号掲載)