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第8回 ─ ジミさんと、またマイルスさん

連載
Bar YAMAGA
公開
2007/07/05   17:00
更新
2007/07/05   18:06
ソース
『bounce』 288号(2007/6/25)
テキスト
文/〈Bar YAMAGA〉のバーテン

武藤昭平による、〈憧れのアーティストたちと酒場でいっしょに酒を飲んだら?〉――という深夜の妄想話!

11:00pm  〈ジミさんと、またマイルスさん〉

深夜23時。今日もこの店に来たのには、実はわけがあった。昨夜俺に少しカラんできたマイルス(・デイヴィス)から、わざわざ呼び出されたのである。いったい俺に何の用だろうか。そろそろ約束の時間になってきた。

「おう、待たせたな」、マイルスの登場だ。「お疲れっす。よく俺の連絡先わかりましたね」「ああ、SOIL &“PIMP”SESSIONSのタブ(ゾンビ)に聞いた」「タブ君とお知り合いっすか?」「ああ、〈モントルー〉で紹介されたんだ」。

 マイルスは俺に紹介したい人がいると言う。連れていた派手な格好の黒人が俺に声をかけてきた。「コンバンワ。ジミ・ヘンドリックスデス」「おわっ! ジミヘンだ!……ああ、武藤と言います」。握手を交わして3人で飲むことに。マイルスがさっそく本題に入った。「今日、バッタリとジミに会ったんだが、前からジミとはいっしょにバンドを組みたいと思ってて」。俺がジミに訊く。「そうなんすか? ジミヘンさん」「〈ジミ〉デス。〈ジミヘン〉デハアリマセン」「あ、すいません」。マイルスが続ける。「で、せっかく日本にいるから、俺とジミ以外のメンバーを日本人にしないかって話になって、それでムトウ君に声をかけてみようと思って。(チャーリー・)パーカーさんも君を薦めてたし、〈フジロック〉にでも出ようかと」「エーッ!」。驚いた俺だが、少し冷静になってマイルスに訊いてみた。「マイルスさんの80年代のライヴ映像を観たことあるんですが、マイルスさんは登場してもなかなかトランペット吹かないですよね。5分ぐらい。吹くと見せかけて指一本でキーボード弾いたり。で、ジミさんはギター燃やしちゃうじゃないですか?」「キブンガヨケレバ、ギター、モヤス」。さらに俺が続ける「じゃあ、マイルスさんがトランペット吹き出す前にジミさんが気分よくなってギター燃やしちゃったら?」。するとマイルスは「ムトウ君のグルーヴがいいところで俺が吹き出す」「……それまで俺マイルスさんに威圧されながらドラム叩くんすか? 一方で燃えてて。たぶんいいグルーヴ出せないっすよ」。

 俺には精神的に無理だと思ったが、この夢のような組み合わせをなんとか実現したいので別のドラマーも呼んで話をしようと提案。The Birthdayのクハラカズユキに連絡した。その間、マイルスとジミとの会話はこうだ。「どう思う? ジミヘン」「〈ジミ〉デス。〈ジミヘン〉デハアリマセン」。
……武藤昭平、あくまでも妄想の話。

深夜23時の妄想盤

THE JIMI HENDRIX EXPERI-ENCE 『Are You Experienced?』 MCA(1967)
音楽史を変えた衝撃のデビュー作。規格外の発想&演奏は、70年代の〈電化マイルス〉にも影響を与えたとか。なお、マイルスさんの奥方と不倫関係にあったと言われるジミさんですが、にも関わらずこうして仲良くご来店いただけるなんて嬉しいですね!

SOIL & "PIMP"SESSIONS 『PIMPOINT』 ビクター(2007)
昨年の〈モントルー〉に続き、今年は〈グラストンベリー〉に出演するなど、世界中の大型フェスからオファーの絶えない彼ら。とはいえ、タブさんとマイルスさんが顔見知りだとは意外ですね。もしかして、トランペットの手ほどきを受けていたりもするのでしょうか?

PROFILE

武藤昭平
ジャズとパンクを融合させたオリジナルなサウンドで人気を博す伊達男音楽集団、勝手にしやがれのドラマー/ヴォーカリスト。ニュー・シングル『U-K-3/IS YOU IS, OR IS YOU AIN'T MY BABY?』(エピック)が好評を博す なか、7月18日にバンド結成10周年を記念したカヴァー・アルバム『LET'S GET LOST』をリリースする予定。そちらには、中島美嘉とのコラボ曲などを収録しているとのこと。その他バンドの最新ニュースは、〈www.katteni-shiyagare.com〉でチェック!