ピエール瀧との電気グルーヴ、川辺ヒロシとのInK、あるいは週末のDJ業……さまざまなかたちでハイ・エナジーな活動を繰り広げるテクノ・マエストロ、石野卓球。2007年下半期、いよいよ彼が本格的に動き始めます。bounce.comでは、そんな卓球氏の超ロング・インタビューを、4週間に渡ってお届け! 近況から電気の今後まで、気になるアレコレについて毎週たっぷりと語り下ろしていただきます。第1回目となる本日は、セカンド・アルバム『InK PunK PhunK』を8月1日にリリースするInKについて。それでは行ってみましょう!
――ここ1年ばかりの近況から。
石野卓球(以下、石野) 去年の夏は、電気グルーヴとInKでフェスにいくつか出て……電気は年末にもライヴをやって……やらされて(笑)。制作的なものは去年はほとんどやってなかった。今年に入ってInKの新作のセッションを本格的に始めて、昨日(6月7日)ようやく作業が終わったって感じかな。あとはリミックスとか、頼まれ仕事が少しあって、週末はDJ。相変わらず月に1回ぐらいドイツに行って、WOMBのレギュラー・イベント(STERNE)をやって……。
――制作をあまりやってなかったのは?
石野 音楽以前の、事務的な制作態勢が整わなくてね。
――去年、フジロック出演と連動して電気のアルバムを作る予定じゃなかったっけ?
石野 そうそう。その予定だったんだけどね。モチベーションはあるんだけど、それを実現できない事情がいろいろあって。手をつけられない期間が4ヶ月ぐらいあってさ。で、このまま待っててもしようがないから、InKをやろうって始めたら調子がよくて。InKの方でアルバム作ろうってことになった。
――最初はInKをやる予定じゃなかったんだ。
石野 うん。InKって責任がないからさ(笑)。期待もされない代わりに責任もない。そのぶん気がラクでさ(笑)。
――ひどいこと言ってるなー(笑)。
石野 あはは。別にネガティヴな意味じゃなくてさ。しがらみってものがまったくないからね。制作を始めるに当たっての段取りも一切なくて、気が向いたら川辺(ヒロシ)に電話して「明日スタジオに入ろう」って言えば、すぐできちゃうし。で、前作の反省点がいろいろあって。それは収録時間が短すぎたっていうのと(46分)、自分らでもフォーカスしきれなかった部分があったことでさ。でもいろいろやっていくうちに、よりフォーカスしない方向にいったらすげえ面白くて。どっちもDJだから、週末にDJやって週のアタマにスタジオに入るわけじゃん。そうすると気分によって、クラブ・トラックを作りたくなるときと、そこから離れたくなるときがある。そのサイクルが川辺とは一致したんだよね。で、どんどん作っていくうちに、CD1枚に入りきらないくらい曲ができたんだけど、並べてみたら曲調がまったくバラバラで、コンピレーション・アルバムみたいになっちゃった(笑)。
――ひとりでやるのとは違うの?
石野 やっぱり違いますよ。もうひとりいると客観性が生まれてくるから、ヘンなところに迷い込むことがない。ひとりでやってると、つい掘らなくてもいいところを掘ってたりしてさ。ふたりでやってるとそれがない。
――でも前はひとりで作ってたでしょう。
石野 あのね、ひとりでやってるとつまんないんだよね(笑)。いやほんとに(笑)。明確なコンセプトや方向が決まってるといいんだけど、それがないとつまらない。ふたりなら〈今日はこれをやろう〉とかお題を設定できるけど、ひとりだとそれも難しいし。