オーディオスレイヴ周辺が揺れ動いているなか、渦中の男たちがそれぞれソロ作をドロップした!
〈レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンの再結成!〉とか〈クリス・コーネルがオーディオスレイヴを脱退!〉といったニュースは、瞬く間に音楽シーンを駆け巡った。レイジの再結成は多くのファンが望んでいたことではあるが、オーディオスレイヴにおけるクリスの歌唱が素晴らしいものだっただけに、複雑な思いを抱いている人も多いことだろう。そんななか、そのクリスと問題のレイジ~オーディオスレイヴのリーダーであるトム・モレロが、ほぼ同時期にそれぞれのソロ・アルバムをリリースした。
クリス・コーネルのニュー・アルバム『Carry On』は、ソロ名義としては99年作『Euphoria Morning』以来、実に8年ぶり。ハードなサウンドの中にメロディーが立った後期サウンドガーデンを彷彿とさせる楽曲をはじめ、カントリー調の楽曲やソウルフルなバラードまでさまざまなスタイルのヴォーカルを披露しており、現代ロック・シーンにおいてもトップクラスに位置する彼の〈声〉が十分に堪能できる作品に仕上がっている。
一方のトム・モレロは、ナイトウォッチマン名義で自身にとって初のソロ作となる『One Man Revolution』を発表した。政治/社会活動家としても有名な彼の一貫した抵抗姿勢を表現すべく、ポリティカルなテーマの楽曲をアコースティックを基調としたサウンドでプレイしている。タイトルどおり、ギター一本と自分の声(言葉)だけで、アメリカ政府をはじめとした社会に対して革命を起こそうとしているようだ。十八番のヘヴィーかつトリッキーなギター・プレイはここでは聴くことができないが、真摯なメッセージが伝わってくる作品になっている。
かたや自分の声を100%生かしてさまざまな表現にトライしたヴォーカル・オリエンテッドな作品、かたやシンプルなサウンドでメッセージを伝えるための武器として自身の声を用いた作品と、両者がこのタイミングで対照的なアルバムを出してきたことが非常に興味深い。やはり分裂は必然だったのか……とまたも複雑な気持ちになってしまうが、ともあれ充実の作品を完成させた両者の今後にも注目だ。
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