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第136回 ─ Fanfare Ciocarlia

多方向に拡散するジプシー音楽の最新世界地図!!

連載
NEW OPUSコラム
公開
2007/04/26   19:00
ソース
『bounce』 286号(2007/4/25)
テキスト
文/大石 始

 ファンファーレ・チョカリーアやタラフ・ドゥ・ハイドゥークスがデビューを飾った90年代以降、ジプシー音楽はそれまで以上に広く聴かれるようになったが、ここ数年、よりエレクトロニックな志向を強めた面々の動きが活発になってきている。その筆頭と言えるのが、ドイツ人DJ/プロデューサーのシャンテル。自身名義での作品/リミックスではジプシー音楽をキッチュにブレイクビーツ化しているが(チョカリーアもその素材に)、自身の主宰レーベルであるエッセイからはNYのゴッタ煮ジプシー・バンドであるバルカン・ビート・ボックス、イスラエルのバルカン・ガレージ・ロック・ユニット=ブーム・パム、脱力バルカントロニカを聴かせるウクライナのOMFOなど、ジプシー音楽を自由かつユルく捉えたオモロ作品を発表している。また、そのシャンテルらがジプシー系の楽曲をリミックスした〈Electric Gypsyland〉シリーズや、最新作『Crazy Itch Radio』にもジプシーの匂いを注入していたベースメント・ジャックス選曲によるコンピ『Gypsy Beats And Balkan Bangers』、NYのシンガー・ソングライター=ベイルートによるジプシー・ロック盤『Gulag Orkestar』などもジプシー音楽の再解釈盤として興味深い。そうした多方向からの注目に対して、少々いなたいブレイクビーツを通して新時代を切り拓こうとするセルビア・ベオグラードのカルや、東欧や北アフリカのメンバーによって南イタリアで結成されたオパ・クパらも新感覚のジプシー作品を届けてくれている。各地に拡散しながら、ユニークな〈子供たち〉を産んでいるジプシー音楽。その動きは今後さらに活発になっていくはずだ。
▼文中に登場したアーティストの作品を一部紹介。

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