細野晴臣による日本ならではのエキゾティック&トロピカルなサウンドは、今日に至るまで日本のポップ・ミュージック・シーンに多大なる影響を与え続けているけど、そのサウンド・アプローチを継承しつつ、それぞれ独自の解釈によって個性的な音楽をクリエイトしている後進アーティストたちをここでは紹介しましょう。
と言っても、まずは後輩ではなく同僚から。細野に〈トロピカル音楽が好きならそれをやればいいじゃん!〉と進言した盟友・久保田麻琴は、『トロピカル・ダンディー』発表後の細野とともにハワイに飛び、共同プロデュースで『ハワイ・チャンプルー』を制作。今作はハリー細野作品と双璧を成す、世界楽園音楽博覧会的内容の歴史的名作です。時代は下って、80年代後半のバンド・ブーム期に登場したのがTHE BOOMとボ・ガンボス。2トーンをベースとしていたTHE BOOMは、90年代に入ると“島唄”や“風になりたい”をはじめ、沖縄やサンバ、ボサノヴァ、サルサ、ガムランなどを積極的に採り入れた独自のサウンドを構築。また、ボ・ガンボスはセカンドラインやボ・ディドリーのジャングル・ビートなど、ニューオーリンズを中心としたアメリカ南部音楽を本格的に消化したサウンドで人気を博しました。
90年代後半になると、細野が主宰するdaisywaorldからも作品をリリースしたPACIFIC231が登場し、日系人兄弟による作品集という架空の設定の下、エレクトロニックなサウンドで魅惑のエキゾティック音楽を披露。また、ビッグバンドで多国籍音楽を無国籍に奏でるDouble Famousのアプローチは、ハリー細野音楽を継承したものと言えるでしょう。スティールパンが主旋律を奏でるLITTLE TEMPOは、マーティン・デニー的エキゾ感にパンクなアクセントとダブ/レゲエの酩酊感をプラスした刺激的なサウンドを創造。そしてカセットコンロスはカリプソやリズム&ブルース、ラテンなど氾カリブ海のヴィンテージなブラック・ミュージックを独自の感性で鳴らしています。最後に、ソウル、ファンク、ラテン、ハワイに中華趣味と逆輸入の日本のイメージを組み込んでユーモアで包み込むといったクレイジーケンバンドのスタイルは、まさしくハリー細野の後継者と言っていいでしょう。