始まりは2005年にリリースされた1枚のシングルからだった。“A Bit Patchy”――タイトルでモジられているように、アフリカ・バンバータいわく〈Bボーイの国歌〉であるインクレディブル・ボンゴ・バンドの大定番ブレイクビーツ“Apache”を大胆に使ったブレイクに、〈カンタネ! カンタネ!〉と(?)繰り返される謎の声ネタ、お腹の具合が悪くなりそうなベース……と、自由すぎる展開の奇怪な(あえて言えば)テック・ハウスが多種多様なフロアを席巻し倒し、翌2006年のアンセムと化したのだ(印象的だったのは〈WIRE06〉での石野卓球のプレイだろう)。そんなアンセムを生み出したのがスウィッチことデイヴ・テイラー(当初はトレヴァー・ラヴィーズとの2人組だった)である。この大ヒットで彼は超売れっ子となり、尋常じゃない数のリミックス仕事が投下(ほとんどが突飛なブレイク+奇怪な声ネタ+過剰なアシッド・ベース+凝ったビートメイクの必殺スウィッチ節)されるも、肝心の“A Bit Patchy”はアナログ盤もしくは現場で聴くしかないという状況が続いていた……。
が、その“A Bit Patchy”がデータのライセンスを受け(ここでプレイダことエリック・プライズのリミックスも追加)、CDシングルもリリースされるや、時を同じくしてヴィタリック率いるシチズン・クルーやUKミニマルの守護神=ルーク・スレイターらのDJミックスに同曲が収録され、やっとそのスゴさが世間一般の耳にも簡単に届くこととなったのだ! カンタネ! カンタネ!
一方でデイヴはスウィッチ以外にもソリッド・グルーヴやモデイラー、インデュセイヴ(これは大注目のジェシ・ローズとのユニット)など大量の名義を持ってはいるが、そのどれもが先述のスウィッチ節! 特にソリッド・グルーヴの“This Is Sick”は表題どおり病気以外の何物でもない狂いっぷりが最高で、これもファットボーイ・スリムやスヴェン・ヴァス、モニカ・クルーズらのミックスCDなどで人気だ。一方、“A Bit Patchy”のリリース元でもあるデイヴ自身のレーベル=ダブサイデッドがクリック・ハウスとディスコ・ダブの面倒を一度に看たような作風で各方面から大注目だったり、こうしてる間に新たなリミックスが登場したり、今年のハウス/テクノ・シーンはスウィッチ~デイヴ・テイラーなしには語れないのだ!

スウィッチのシングル“A Bit Patchy”(Dubsided/Data)
▼“A Bit Patchy”を収録した最近のミックスCD。
▼“This Is Sick”を収録した最近のミックスCD。