次松大助が見つめる、とある町の日常──
冬です。風邪をひきました。頭痛がします。熱はありませんが吐き気がします。頑張れません。たばこを吸う以外、何もしたくありません。
……が。
ついに引越しが完了しました。約一か月かけて黙々と自力で荷物運びをしたのですが、引越し先もエレベーターがないので4階まで階段を使って昇り降りしました。たいへん大変でした。何十回も階段を昇り降りして、ようやく全ての荷物を運び終えたときは、達成感ではなく疲労感でいっぱいでした。次は間違いなく引越し屋に頼もうと反省しました。
ベランダから下を見降ろすと、ちょっとした川が流れていて、百万匹のカメと十万匹のフナと二羽のカモと白い巨大な一羽の鳥が住んでいます。川の反対側のスーパーの前には、四匹の猫の親子がアンニュイな鳴き声で〈ナーナー〉と鳴いていて、とても寒そうです。カメはもはや寒すぎてどこかへ隠れてしまったのですが、夏になると一斉に甲羅を干していて、何かのきっかけでまた一斉に水に飛び込む様は本当にグロテスクです。白い巨大な鳥は、たぶん鵜かサギだと思うのですが、夜中に急に発声不良の水商売の女の人みたいな声で〈ギィヤァ、ギィヤァ〉と叫ぶのでびっくりします。実家がすぐ近くなので、この辺のことはよく知っていますが、鳥を除けば夜は静かでとても良いところです。現在、夜の二時半ですが、ベランダへ出てみると、まだ起きている2、3の窓明かりと、外灯と電話ボックスと右上辺りにシリウスや何かが青白く光っているくらいで、高く上り過ぎてここからは見えない満月の下で、町全体が眠ってしまったようです。
地図上で知ったのですが、この川を産卵期の鮭のように上って行ったら、僕が子供の頃に住んでいた町に繋がっていたので驚きました。何だか嬉しくもあり、少し虚しくもありました。
明日、朝早いのでもう寝ます。眠々。
今月のBGM

DOROTHY CARLESS
『The Carless Torch』
Hi-Fi
もう5年くらい前から時々聴いているCDです。冬にはこのくらいのテンションがちょうどいいです。
PROFILE
次松大助
99年に大阪で結成されたオリジナル・スカ・バンド、The Miceteethのヴォーカリスト。2006年はニュー・アルバム『CONSTANT MUSIC 2』のリリース、日本各地でのライヴ活動など精力的な動きを見せ、大きな話題を集めました。2007年の動向は〈www.miceteeth.net〉にて!!