毎回素敵なダンディをお迎えしてお送りする〈月刊太田・ダンディ食堂(DANDY SHOCK-DO)〉。今月は、日本のロック・シーンの生き字引にして重鎮=ザ・コレクターズから加藤ひさしさんがゲスト。結成20周年を迎えたバンドの足跡を網羅したスペシャル・ボックスがリリースされたばかりのザ・コレクターズ。当コーナーのホスト、太田浩とも長いお付き合いが続いているようで……。

加藤ひさし(ヴォーカル、以下加藤):(15年以上前に加藤さんと太田が出演した、とあるトーク・イベントの台本を見ながら)〈第三次UFOブーム〉だって(笑)。あったのかよ、そんなの!
太田:(笑)ユリ・ゲラー! 小林少年!
加藤:いいねぇ~。歴史を感じるね。貴重だよー。
太田:最近どうなんですか? この辺は。
加藤:すっかり……冷めましたね。
太田:(笑)だはははは!
加藤:UFO熱ね~……、この頃高かった。今はそういうロマンがなくなったね。〈ネッシーとUFOと雪男〉はね、マストだったよ。ミステリーの。でも、どう考えても雪男はいねーだろうと。
太田:もっと深いところに入っていったんだ?
加藤:いや、全然(笑)。洒落たもんじゃないよ、超常現象系はね。そうだ、「実録:雪男を見た」みたいなビデオがあって、一度コータロー(古市コータロー、ザ・コレクターズのギタリスト)くんとレンタルしたら、明らかにかぶりものなんだよ。で、最後ね、雪男のカップルが花を摘んでるっていう! これはさすがに違うだろう、と思って。
太田:だはははは!
加藤:その辺から「ネッシーも違うだろう」となって、矢追(順一)さんから離れたんですよね。俺らのまわりでは〈矢追離れ〉って言ってるんですけど(笑)。今やこういう話にもなんないですね。
まだ謎が謎のままだった時代、そして海の向こうも遠かった時代。UKロックの美学をとことん追求しながら、それまでの日本のロックの定義を塗り替えつつキャリアを重ねてきたザ・コレクターズが結成されたのが1986年。
加藤:なんかさ、ケイト・ブッシュが〈東京音楽祭〉で銀賞をもらった78年に来日した時、「ミュージックフェア」みたいな30分のTV番組に出たのね。それのケイト・ブッシュがすっっっごい良くて。で、こないだ、その時に歌った(ビートルズの)“Long And Winding Road”を「YOUTUBE」に載せたやつがいてね。ということは、誰かその映像を持ってるわけじゃん。……それ、探してくれない?
太田:(笑)!!
加藤:もちろん彼女の曲の“嵐が丘”も歌ってたし。生でやったんだよ。それ、今でも観たくて。探してるんだよ。
太田:ネットのおかげで探しやすくなりましたからね。
加藤:そう、今だと、ある程度健康的にそういうもの流行るじゃん? オレ、映画好きじゃないですか? 昔から、イタリアの監督パゾリーニの超ファンで。遺作の「ソドムの市」、観たくてしょうがなかったの、当時。87、8年かな? ヒカシューの巻上(公一)さんに『「ソドムの市」みたいんだけど』って言ったら「いいヤツ紹介する」って言われて。
太田:いいヤツってなんだ(笑)!?
加藤:そうしたらすっごい男が出てきたんだよ……! とんでもない映画おたく。当時からエド・ウッドの作品とか持ってるようなヤツで。「「ソドムの市」なんだけど」って言ったら「いいのがあるよ。ヨーロッパのPALから落としたヤツなんだけど。若干映像がアマいんだけどいいかな?」って言われて(笑)。
太田:〈アマい〉って(笑)。
加藤:(笑)「アマいってどういうことかな?」と思いつつ。で、「いくら?」って訊いたら「末端価格26,000円」とか言って(笑)。
太田:高い!!! (笑)ダビングでしょ?
加藤:ダビングだよ。「ふざけんなよ」と思いながら買っちゃったんだよ。そしたら「TERROR OF TINY TOWN」っていう映画をおまけでつけてくれた(笑)。なおかつパンフレットもついてて、見たら〈西ドイツ医学部用解剖ビデオ30,000円〉とか書いてあって、「こんなのどうですか?」って勧められて。「そういう趣味じゃないんです」とか言って断った(笑)。すごかった。昔はそういうヤツいたね。連絡先は必ず私書箱だしね。電話番号もちょくちょく変わっていくしね。