70年代の日本におけるロック・シーンはいろんなものが始まり、絡まり合い、化学変化を起こしていた時代。その10年をこのコラムでまとめるにはあまりに役不足だけど、例えばサディスティック・ミカ・バンドが登場した73年にリリースされたアルバムを見ていくだけでも、あの時代の熱気は伝わってくるだろう。
この年、はっぴいえんどはラスト・アルバム『HAPPY END』を発表し、細野晴臣は『HOSO-NO HOUSE』を皮切りにソロ活動を開始した。さらに後にムーンライダーズへと発展するはちみつぱいの『センチメンタル通り』、吉田美奈子の『扉の冬』、さらに南佳孝の『摩天楼のヒロイン』など、はっぴいえんど周辺のミュージシャンたちが次々とデビュー。70年代後半に隆盛を極めるシティー・ミュージックの種が蒔かれたのもこの頃だ。一方で、荒井由実の『ひこうき雲』やオフコース『僕の贈り物』など、後のニューミュージック・シーンの大物たちもこの年にデビュー。さらにロック勢では伝説の村八分が『LIVE』を発表。矢沢永吉率いるキャロルもデビューを果たして『ルイジアンナ』『ファンキー・モンキー・ベイビー』を立て続けにリリースし、サディスティック・ミカ・バンドと並んでロックの大衆化に拍車をかけた。70年代とは現在のJ-Popの基礎を作った時代でもあるのだ。
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