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第6回 ─ 土曜の午後の昼下がり

第6回 ─ 土曜の午後の昼下がり(2)

連載
星 野 源 の 唄 い だ す 小 説
公開
2006/08/31   16:00
更新
2007/05/02   16:16
テキスト
文/星野 源

 二人、いつの間にか商店に着いていた。

下山 「いいや、とりあえず買おう。(奥に)すいませーん」

 返事がない。
  二人が奥を見ると、ますだのおばちゃんがイヤホンをしながら歌を歌っていた。


暮れて 夏の夜の花火
見上げ 居ないあなた想う

ゆうべは御免ね
そう言えば済むのに
こんなことを一生
繰り返して 泣いて

過ぎて 秋の夜の風で
胸に 風の穴があけば

あなたに 素直に
言えるように なるわ
忘れて しまって
待っていてよね


上村 「すいませーん」

 間。
  ますだのおばちゃんは歌っていて、二人には気づかない。
  二人は何も言わずに顔を見合わせた。
  そして二人は冷凍ケースからパピコを出して走って逃げだした。
  全力で走る二人。

下山 「ラッキー!」
上村 「うほーい! 得したー!」

 太陽が沈み始め、空は夕暮れ始めていた。
  息を切らしながら、二人が公園に帰ってくる。

上村 「大成功ー」
下山 「ハアハア、やったね」
上村 「でも、急いでたから、一個しか持って来れなかったぜ」

 上村はそう言ってパピコの袋を開け、二つに分けた。

上村 「はい(下山に渡す)」
下山 「センキュー」

 上村、パピコを食べだす。
  下村、パピコをまじまじと見つめていた。

上村 「(食べながら)ん、食わないの?」
下山 「あのさ、ちょっとやってもらっていいかな」
上村 「ん? なにすんの?」
下山 「これ、おれのケツに入れてくれないかな」

 間。

上村 「……え?」
下山 「これ、おれのケツの穴に入れてくれないかなあ」
上村 「え、パピコ? なんで?」
下山 「女より強くなりたいだよ」
上村 「ん、んご、んふ?(むせる)」
下山 「いれろ」

 下山、そう言ってズボンを脱ぎ始めた。

上村 「おい! ちょっとやめろって!」
下山 「大丈夫だ! 強くなるためだ!」
上村 「あ! ちょっと! やめてー」

 下山、ズボンとパンツを脱ぎ、自分のケツにパピコの丸い方を自分で突っ込んだ。
  悲鳴を上げる下山。

下山 「痛い! 痛い!」
上村 「うわー! そりゃ痛いよ! 抜くか?」
下山 「抜くな! 動かすんだ!(激怒)」
上村 「わ、わかった!(動かす)」
下山 「うぐ、痛ええ! ああ、しかも冷たい! 痛冷たーい!」
上村 「下山! がんばれ!」

 下山、泣いていた。
  上村もパピコを動かしながら泣いていた。

上村 「強くなれー!」
下山 「あ! なんか気持ちよくなって来た!」

 上村、手を止めた。

上村 「乗り越えたのか?」
下山 「……乗り越えたみたいだ」
上村 「やったぞう!」

 手を取り合って喜ぶ二人。
  下山はパピコを抜き、ズボンを履いた。

下山 「このパピコは、ここに埋めていこう」

 下山、パピコを草むらの陰に埋めた。

上村 「これは、俺たちの友情の証だな」
下山 「ああ、そうだ」

 下山と上村は固い握手をした。
  そして二人は夕飯のにおいに誘われて、互いの家に帰ったのだった。

 次の日、下山が痔で入院した事は、言うまでもない。

おしまい

星野 源


  トロンボーン・ギター・ベース・ドラムスという編成のインストゥルメンタルグループ、SAKEROCKのリーダー。音楽活動と並行して役者業も行い、役者として大人計画事務所に所属している。最近では執筆業も多くなりコラムや小説を連載中。役者として主な出演作品は映画『69 sixtynine』、ドラマ『タイガー&ドラゴン』など。

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