二人、いつの間にか商店に着いていた。
下山 「いいや、とりあえず買おう。(奥に)すいませーん」
返事がない。
二人が奥を見ると、ますだのおばちゃんがイヤホンをしながら歌を歌っていた。
♪
暮れて 夏の夜の花火
見上げ 居ないあなた想うゆうべは御免ね
そう言えば済むのに
こんなことを一生
繰り返して 泣いて過ぎて 秋の夜の風で
胸に 風の穴があけばあなたに 素直に
言えるように なるわ
忘れて しまって
待っていてよね
♪
上村 「すいませーん」
間。
ますだのおばちゃんは歌っていて、二人には気づかない。
二人は何も言わずに顔を見合わせた。
そして二人は冷凍ケースからパピコを出して走って逃げだした。
全力で走る二人。
下山 「ラッキー!」
上村 「うほーい! 得したー!」
太陽が沈み始め、空は夕暮れ始めていた。
息を切らしながら、二人が公園に帰ってくる。
上村 「大成功ー」
下山 「ハアハア、やったね」
上村 「でも、急いでたから、一個しか持って来れなかったぜ」
上村はそう言ってパピコの袋を開け、二つに分けた。
上村 「はい(下山に渡す)」
下山 「センキュー」
上村、パピコを食べだす。
下村、パピコをまじまじと見つめていた。
上村 「(食べながら)ん、食わないの?」
下山 「あのさ、ちょっとやってもらっていいかな」
上村 「ん? なにすんの?」
下山 「これ、おれのケツに入れてくれないかな」
間。
上村 「……え?」
下山 「これ、おれのケツの穴に入れてくれないかなあ」
上村 「え、パピコ? なんで?」
下山 「女より強くなりたいだよ」
上村 「ん、んご、んふ?(むせる)」
下山 「いれろ」
下山、そう言ってズボンを脱ぎ始めた。
上村 「おい! ちょっとやめろって!」
下山 「大丈夫だ! 強くなるためだ!」
上村 「あ! ちょっと! やめてー」
下山、ズボンとパンツを脱ぎ、自分のケツにパピコの丸い方を自分で突っ込んだ。
悲鳴を上げる下山。
下山 「痛い! 痛い!」
上村 「うわー! そりゃ痛いよ! 抜くか?」
下山 「抜くな! 動かすんだ!(激怒)」
上村 「わ、わかった!(動かす)」
下山 「うぐ、痛ええ! ああ、しかも冷たい! 痛冷たーい!」
上村 「下山! がんばれ!」
下山、泣いていた。
上村もパピコを動かしながら泣いていた。
上村 「強くなれー!」
下山 「あ! なんか気持ちよくなって来た!」
上村、手を止めた。
上村 「乗り越えたのか?」
下山 「……乗り越えたみたいだ」
上村 「やったぞう!」
手を取り合って喜ぶ二人。
下山はパピコを抜き、ズボンを履いた。
下山 「このパピコは、ここに埋めていこう」
下山、パピコを草むらの陰に埋めた。
上村 「これは、俺たちの友情の証だな」
下山 「ああ、そうだ」
下山と上村は固い握手をした。
そして二人は夕飯のにおいに誘われて、互いの家に帰ったのだった。
次の日、下山が痔で入院した事は、言うまでもない。
おしまい
星野 源
トロンボーン・ギター・ベース・ドラムスという編成のインストゥルメンタルグループ、SAKEROCKのリーダー。音楽活動と並行して役者業も行い、役者として大人計画事務所に所属している。最近では執筆業も多くなりコラムや小説を連載中。役者として主な出演作品は映画『69 sixtynine』、ドラマ『タイガー&ドラゴン』など。
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