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第6回 ─ 土曜の午後の昼下がり

連載
星 野 源 の 唄 い だ す 小 説
公開
2006/08/31   16:00
更新
2007/05/02   16:16
テキスト
文/星野 源

毎回選ばれたインストの楽曲にあわせて、登場人物の誰かが突然唄いだすというSAKEROCK星野源によるコンセプチャルな読みきり小説。今回の〈唄いだすインスト曲〉は、蓮実重臣と三宅剛正による軽音楽チーム、PACIFIC 231が98年にリリースした幻のコンセプト・アルバム『MIYASHIRO』に収録された楽曲です。タイトル曲を聴きながら、歌詞を口ずさんでお楽しみください。

今月の唄いだすインスト曲:PACIFIC 231 “NABESHIMA-BUSHI”(アルバム『MIYASHIRO』より)

 土曜の午後の昼下がり。
  二人の男が話をしている。

下山 「ねえ、お前エーブイとか観た事ある?」
上村 「ね、ねえよ。何それ。ぜんぜんわかんねえ」

 二人は小学六年生であった。
  下校途中の公園で、パピコを食べながら話をしている。

下山 「ないよな? そうだよなあ」
上村 「え、何々、そのエーブイってやつ? お前観た事あんのかよ」
下山 「ね、ねえよ!」
上村 「え、え、え、え、観た事ないのに聞くのおかしくねえ?」
下山 「……観た事ねえから聞くんじゃんか」
上村 「そもそもさエーブイってなんなんだよ?」
下山 「あれだろ? なんかすげえエッチなんだろ?」
上村 「エッチってなんだよ!(怒る)エッチってなんだよ! どういうことだよ! 殺すぞ!」
下山 「あ!? てめえ何怒ってんだよ! 殺せんのかよ、てめえに殺せんのかよ、殺してみろよ! 刑務所入って一生パピコ食えなくなんぞ!」
上村 「は? 小学生は刑務所入れませんー」

 二人、パピコをベンチの端にそろえて置き、しばし殴り合いの喧嘩をする。
  3分半の果たし合いの末、勝者は下山であった。

上村 「あーん(泣く)」
下山 「泣くなよ!」
上村 「ごめんよー。殺さないよう。パピコ食えないのやだよう(泣く)」
下山 「……」
上村 「ごめんよー」
下山 「おれも悪かったよ。小学生は刑務所入れねーもんな」
上村 「うん」

 上村、泣き止んだ。

下山 「だから、せっくすだよせっくす。エーブイはせっくすするんだろ?」

 上村、笑い出す。

上村 「あはは、せっくすって。あはははは」
下山 「何笑ってんだよ」
上村 「だって、あはははは。超受ける!」
下山 「家庭科の授業でやったろ?」
上村 「ケツの穴にあれだろ? ペニス入れんだろ? 超面白いんだけどー」
下山 「入れねえよ!」
上村 「……え?」
下山 「バギナだよ。バギナに入れんだよ、家庭科でならったろ?」
上村 「……何バギナって?」
下山 「……」
上村 「ねえ、なに? バギナって」
下山 「あれだよ、二つ目の穴っていうか」
上村 「え?」

 間。

下山 「女はケツの穴が二つあんの!」
上村 「えー!? すごくねえ? すごくねえ?」
下山 「おれさー女には一生かなわねえ気がするんだよね」
上村 「え? なんで?」
下山 「だってケツの穴二つもあんだぜ!」
上村 「やっべえ、おれも女に勝てねえ気がすた。……あ、すたって言っちゃった」
下山 「あはははは!」

 二人笑い転げる。

上村 「あはははは、すたって!」
下山 「すた……すた……(笑いすぎて声が出ない)」
上村 「すた、あははは……」
下山 「すげえ、田舎の人みてえ。あははは」
上村 「(激怒)てめえ! 田舎馬鹿にするんじゃねえよ!」

 間。

下山 「……」
上村 「田舎馬鹿にすると、ばあちゃんに呪われっぞ! 覚悟しとけよ!」
下山 「……ごめん」
上村 「呪われてもいいのかよ」
下山 「やだ」
上村 「じゃあもう一生馬鹿にすんなよ」
下山 「わかった、ごめん」
上村 「じゃあ、いいよ」

 間。

上村 「ねえ、パピコ買いにいかねえ?」
下山 「あ、うん。行こう行こう」

 二人、駄菓子屋「ますだ商店」に向かって歩きだす。

上村 「やっぱり夏はパピコだよなあ」
下山 「うん。……ねえ、あといくら残ってる?」
上村 「さっきパピコとチョコバット買ったから……えーと170円」
下山 「あ、じゃあさ二人合わせて3つ買おうぜ」
上村 「おーいいじゃん、3本づつ食えるね」
下山 「いや、違うんだけど」
上村 「え?」
下山 「やってみたくてさ」
上村 「何を?」

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