自分の手の届かない手わざ。
あこがれてやまない人々。
ストーリーテラーたち。
アリステア・マクララウドの「完璧なる調和」を読んで、なんて話だ、素晴らしい!と感動して身体が動けなくなる。スーパーマーケットの休憩スペースで。
レイモンド・カーヴァー「ダンスしないか?」、G・ガルシア=マルケス「火曜日の昼寝」、トーベ・ヤンソン「往復書簡」、幸田文「台所の音」……。いずれも自由な文体と比喩表現に、生の陰陽を混ぜ合わせたストーリー。物語を運ぶ空気の中に、サウダージやブルースと親戚関係にある〈藍色〉をみつける。
サガンの「私自身への優しい回想」は、家の本棚で最も美しく輝く短編集。ビリー・ホリデイやサルトルなどの著名人から、賭博やスピードに至るトピックまで、彼女の深い愛情を反射する対象について、互いの関係から想いまでを誠実に書いたもの。こんな愛に溢れた本こそ、部屋にひっそりと在り続けてほしい。
踊りたくなるような曲に絶望的な歌詞。または、寂しい曲調に愛に溢れた幸福な歌詞。そんな相反する組み合せの音楽は魅力的。それは数々の島音楽が証明するだろう。幸福な設定に悲しみが舞い、悲劇的な場面に笑いが滲み出す、そんな短編と出会っていきたい。
世界中の語りべは世界を語る。
しかし、世界は聞いてはいられないような情報で持ちきり。人々は、それを何なく受け止められる程マヒしているのではなく、この時代を生きる為に必要な強力な感覚のフィルターで濾している。そのおかげで、致命傷になるほど心の奥深くまで潜ってこない。ただ、そのフィルターがほころんでいる人たちも大勢いる。わたしもその一人。むやみやたらに耳を傾けることはできない。
PROFILE
青柳拓次
サウンド、ヴィジュアル、テキストを使い、世界各地で制作を続けるアート・アクティヴィスト。LITTLE CREATURES、Double Famousに参加する他、KAMA AINAとしても活動中。Double Famousの一員として〈TRUE PEOPLE'S CELEBRATION〉などの野外フェスティヴァルにも出演予定。