次松大助が見つめる、とある町の日常──
暑いうえに暇なので、冷蔵庫のドアを開けたり閉めたりして涼む。工業港からの潮風が臭い。加えて、この辺一帯の古い家屋はいまだに汲み取り式便所なので、この時期は町全体がなんとなく臭い。
さて、僕が先週考案した〈スイミング・ヒルズ〉という遊びを紹介します。まず、〈1. 公園に行く〉〈2. 耳を塞ぐ〉……と、まぁそれだけなんですが、どこを楽しむかというと、耳を塞ぐことによって時間の最小単位が変わる、というところです。たとえば、音が聞こえている状態のときは、鳥の鳴き声や、そのパターンが変化することによって、あるいは子供達の会話に沿って正常な時間の流れを感知できます。ところが、音が聞こえない状態になると、時間の流れがもう少し大きくなります。木々の揺れが治まる、雲が移動する、日が照り出す、影が伸びる、といった具合に、大雑把な出来事によってのみ時間の経過を知るようになります。その、耳が聞こえるときと、聞こえないときの時間の変化を楽しむ、というのがこの遊びの醍醐味です。しかし末期の老人ホームでも流行らなさそうな地味な遊びですので、僕も二回目にはすっかり飽きてしまいました。ホームセンターで買った上下セットのジャージを着て、公園でお酒を飲みながら耳を塞いでボーッとしている僕は、初期~中期の変質者です。ただ、初めての方には少しの暇つぶしにはなるだろうと思い、紹介しました。
暇つぶしついでにもう一つ。和泉市民に毎月届く「広報いずみ」の〈健康豆知識〉コーナーに、鼻血が出たときの対処法が載っていたので、暑い夏に向けて紹介しておきます。まず、鼻血が出たら〈1. 小鼻を指でつまみ上げる〉〈2. 下を向く〉〈3. 鼻に綿球かティッシュを詰める〉〈4. 強く押さえて10分間我慢する〉〈5. 彼女に電話する〉〈6. 逢いに来てもらう〉〈7. ハイヒールで殴ってもらう〉〈8. 強い鼻を作る〉。冗談です(1~4は本当です)。
全てを夏のせいにして昼寝をしていると、TVを見ながら喋っている妻の独り言が聴こえます。素晴らしい夏。
今月のBGM

PABLO CASALS
『J. S. Bach Cello Suites』
EMI Classics
パブロが13歳の時、初めて普通サイズのチェロを買って貰った日の午後、古い楽器店でその存在すら知られていなかった曲の楽譜と出会います。12年後、大人になった彼によって初演されたその曲こそ、この無伴奏チェロ組曲だったのです。
PROFILE
次松大助
99年に大阪で結成されたオリジナル・スカ・バンド、The Miceteethのヴォーカリスト。次松のポップセンスが爆発する新曲“シュガープールでつかまえて”が発表されたばかり。現在は8月にリリースされる待望のニュー・アルバムを制作中。〈www.miceteeth.net〉も要チェック!!