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第7回 ─ 〈FUJI ROCK FESTIVAL 06〉各アクトの詳細をレポート

連載
オレらの 夏 フ ェ ス 予習・復習帳 06
公開
2006/08/10   22:00
更新
2006/08/11   16:55
テキスト
文/田家 大知、小田 由美子、星野 源、原田 亮、内田 暁男、ヤング係長

日本のフェスティバルの雛形を作ったといっても過言ではないFUJI ROCK FESTIVALも今年で10年目。過去最大の131,000人(延べ人数)の集客を記録し、ますます盛り上がりを見せる同フェスのレポート第2弾は、ライター陣の記憶に残ったライヴの詳細をお伝えいたします。当日の苗場の様子を想像or思い出しながらご覧ください。第1弾はこちらからどうぞ。

7月28日(金)

11:30~
■SAKEROCK @WHITE STAGE


SAKEROCK

  フジロックのサケロック! と無意味な言葉をテンション高めに叫びたくなるほどこの日のSAKEROCKは絶好調だった。初日の初っ端から大入りの〈WHITE STAGE〉に現れた彼らは、クレイジー・キャッツよろしく、全員白のスーツ姿(靴までおそろい)。その気合の入りっぷりが直結したかのようなテンション&緊張感が途絶えない演奏で観客をグイグイ引っ張ってくれた。曲間にフロントマン=ハマケンのフリースタイル(&寸劇)が挿まれる“Old Old York”では、政治的に問題のありそうなMCを連発し、会場をどっかんどっかん言わせておりました。〈ROOKIE A GO-GO〉 → 〈苗場食堂〉を経て、3年連続出場で着実なステップ・アップを見せてくれた彼らに拍手を。*ヤング係長

12:40~
■THE SPINTO BAND @RED MARQUEE


スピント・バンド

  アルバム『Nice And Nicely Done』がクチコミで火がついた、米出身キラキラ・ローファイ・バンド。サウンドから予想した通りのナード風好青年が6人並ぶと、おとぎ話の機械じかけ人形のようなキモカワイイ動きで熱演。曲によって楽器を持ち替えたり、メンバーの誕生日ということで客席から“Happy Birthday”が歌われたり、なぜか紙風船で遊んだりと、終始アットホームな雰囲気の中、代表曲“Oh Mandy”や〈アウッアウッアウー♪〉のコーラスがラブリーな“Trust Vs Mistrust”、カズーをズーズー吹く“Brown Boxes”など、聴きたかった曲は全部聴けて満足。ブレイクも時間の問題ですね。単独公演しないかなあ。*田家 大知

14:20~
■A HUNDERD BIRDS ORCHESTRA @WHITE STAGE

 心配だった天候にもそこそこ恵まれ、昼を過ぎたころには既に酩酊初期状態に。ザ・クロマニヨンズで出演した甲本ヒロトのケツを見逃しつつさらにハイネケンを飲み進めると、大阪を拠点に活動する(だいたい)30人編成の人力ハウス・オーケストラ、A HUNDRED BIRDSが登場。執拗な四つ打ちの上で展開する、ストリングス、ホーン、パーカッションの抜き/差し~キーボードとヴィブラフォンの掛け合いで、1,000人をゆうに超える観客を手玉に取る姿は魔法でも見せられているよう。“Jaguar”、“Jungle Kitten”と、分厚い音で奏でられる極上カヴァーの連発に、会場全体を包みこむような祝祭感・多幸感が広がっていた。後半はソウルフルなヴォーカル曲がメインのセットとなり、“Batonga Beautiful”~“In The Sky”で終演。もっと観たかった! *ヤング係長

17:20~
■GNARLS BARKLEY @WHITE STAGE


ナールズ・バークレー

  「スター・ウォーズ」、「時計じかけのオレンジ」、「スーパーマン」などのコスプレ写真でメディアに登場してきたナールズ・バークレー。待望のフジ来日では、レストランのウェイトレスとコックたちというコスプレで登場した。シー・ロー、デンジャー・マウスを中心にギター、ドラム、コーラス、ストリングスを従えた編成。アルバム『St.Elsewhere』で冒頭を飾った高速トラック“Go-Go Gadget Gospel”ではじまり、後半にソウルフルな“Crazy”を投入するという展開は予想通りだったが、意外だったのはバックの演奏とシー・ローの喉だった! 爆音で展開するブレイクビーツの上に、ギター、ベースが被さるロッキンな音像。その上で汗だくでシャウトしまくるシー・ローさんの激しいこと。衣装を脱ぎ捨てシャウト&ご満悦のシー・ロー、不敵な笑みを浮かべながらツマミをいじるデンジャー・マウスの二人が好対照なステージだった。次のアルバムは、よりロック・テイスト全開かも!? *原田 亮

18:30~
■矢野顕子 @ORANGE COURT


矢野顕子

  〈ORANGE COURT〉に、グランドピアノと矢野顕子だけ、という今回のソロ出演。振り子が左右に振れるようにゆったりと流れる彼女の繊細なピアノタッチは数本のマイクを経由して山麓に響く、轟音過多気味(?)の今回のフジでは貴重な体験。くるり“ばらの花”、ムーンライダーズ“ニットキャップマン”のほか、ELLEGARDENの曲を取り上げ、英語詞のパンク・ソングを彼女独特の抑揚でカヴァーするのが印象的。「くるりの佐藤くんが、来年フジロック一緒に出ましょうよと言ってくれたのだけど、結局私ひとりで来てしまいました」、「この後は細野(晴臣)さんをみた後に、フランツ・フェルディナンドを観に〈GREEN STAGE〉までダッシュします!」なんてお茶目なMCも。会場中の観客が一音一音を聞き逃さないよう固唾を飲んで見守る、大人のステージだった。その感動を運んだピアノはハリー・ホソノ・クインテットのステージ袖近くにそのまま置かれて……。*原田 亮

20:20~
■ハリー・ホソノ・クインテット @ORANGE COURT


細野晴臣

  細野さんは挑戦する。今回フジロックでのハリー・ホソノ・クインテットは、ザ・クロマニヨンズにも勝る新人バンドである。前回、狭山・ハイドパークフェスでの伝説の細野さんの〈うた〉復活劇では、過去と現在をがっちりと繋ぎ、多くの〈昔に縛られている音楽ファン〉を涙させた。

 しかし今回は違った。過去の名曲たちをしっかりと演奏しつつも、新しい曲と幾つかのカヴァー、そしてバンド・メンバーであるコシミハルさんと浜口茂外也さんのヴォーカル・ナンバーなど、曲の雰囲気や演奏スタイルこそカントリーやロカビリーのそれだが、まったくノスタルジックではない音楽に僕はとってもしびれてしまった。もちろんユーモアも忘れていなく、オープニングは細野さんとコシミハルさんのダンスも観れたし、MCはとっても粋だった。今回のサプライズ・ゲスト、矢野顕子さんとの素晴らしい共演はノスタルジックだったけれど、ハリー・ホソノ・クインテットは未来のバンドだなあ、と涙をちょちょぎらせながら思った。*星野 源(SAKEROCK)

21:40~
■上々颱風 @FIELD OF HEAVEN


  20年ものキャリアを誇る百戦錬磨のお祭りバンドながら、初見の人も多かったはず。それでも飲めや踊れやの大宴会にしてしまった手腕はさすがです。“愛より青い海”などの名曲から、「ロックスターになりたかったけど入るバンドを間違えた。だってこのバンドにはギターがいない」と酒田弁で語る詞が爆笑を誘う“Cry Baby”、ヴォーカルの白崎映美がフェンスの上に登り観客を大合唱させた“Let It Be”など、意外にも(?)ほとばしるロック・スピリッツとアジア音楽が本来持つファンクネスを混在させたステージは、渋さ知ラズやソウル・フラワー・ユニオンばりにフジロックとの相性のよさを見せてくれた。3日間のベスト・アクトに挙げる人も多かったし、自分もその1人。*田家 大知

▼文中に登場したアーティストの作品を紹介