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第93回 ─ 『BLUE CHRONICLE』を起点に始まるビートメイカーたちの新しい旅

連載
360°
公開
2006/07/06   21:00
ソース
『bounce』 277号(2006/6/25)
テキスト
文/一ノ木 裕之、狛犬


 新世代のグルーヴ・マイスターたちが本領を発揮する時がついに来た──『BLUE CHRONICLE』を聴いて、そう確信させられた。ここ数年、ヒップホップ・リスナーに留まらない層からも突出した支持を得ているトラックメイカーといえばNujabesの名前が浮かぶだろうが、このコンピに参加しているDJ Ryow、Shin-Ski、Levitatorz、Cradleは──いま、あなたがその名を知ろうが知るまいが──今後あきらかな上昇を見せることが確定しているビートメイカーたちだ。彼らはいわゆる〈日本のヒップホップ界〉と殊更に密接だったわけでもなく、独自に活動を続けてきた存在だからして、今回『BLUE CHRONICLE』に収められた15トラックもヒップホップとしてどうこういう話以前に、ソウルフル/スムース/ジャジー/メロウ……といったイマジナリーな形容が与えられるべきもので、純粋に美しいループ・ミュージックとなっている。

 なお、このコンピが編まれるに際しては、かつてJ・ディラやピート・ロック、ウィル・アイ・アムらの野心的な作品を送り出したBBEの〈The Beat Generations〉シリーズも念頭にあったようだ。が、そうした名前を挙げずとも、この蒼く煌めく珠玉のサウンドスケープは、聴きさえすればすんなりと伝わるものに違いない!!
(狛犬)

INSIGHT 『Targeting Zones』 Last Arcadia/バッドニュース(2004)
エレクトリックの中核として、アンダーグラウンドでの別格的な人気を誇るインサイトだが、日本での支持はこの初ソロ作あたりがスタートか。盟友のShin-Skiが4曲をプロデュース/1曲をリミックスし、さらにDJ Ryowも“No Turning Back”のビートで好きモノのツボを絶妙に突く。
(狛犬)

DJ Ryow a.k.a. smooth current
Preasure Productsを主宰して、〈Family〉や『Pleasure Unplugged-1&2』をはじめとするミックステープ、『Gems EP』などのアナログをリリースする一方で、インサイト、タイム・マシーンら海外アーティストのリミックスを担当。そうした制作活動の傍らで、来日アーティストのライヴ・イヴェントをDJとしてサポートしたり、交流のあるNujabesのレーベル=HYDEOUTの関連イヴェントにてレジデントDJを務めるなど、現場での活動歴も豊富だ。荒々しいコスリを交えて生のノリをグッと注入するトラックメイクとそれをまとめていく構成力は、恐らくそうした現場経験の賜物だろう。今後も海外勢とのコラボやソロ・リリースなどが控えているという。
(一ノ木)

THE PROCUSSIONS 『Up All Night』 MICLIFE(2004)
ロウカスからの新作も記憶に新しいコロラドの3本マイクが、表題どおり一晩のセッションでフリースタイル的に作り上げたアルバム。Shin-Skiの手による“Introducing...(What's Your Name?)- My Name Is Shin-Ski Remix”は、まるでその一夜に立ち会っているかのようなファンキーな臨場感が抜群!!
(狛犬)

LUSHLIFE 『Order Of Operations』 Scenario/MICLIFE(2006)
カニエ・ウェスト+ビーチ・ボーイズのマッシュアップで注目を集めた才人のスタイリッシュな傑作にも、ヤム・フー?らと並んでShin-Skiがリミキサーとして登場。涼やかなヴィブラフォンがコロコロと鳴り響く表題曲のリミックスは、サマータイムの避暑に欠かせなくなりそうな好トラックだ。
(狛犬)

PROJECT MOVE 『Love Gone Wrong/The Butterfly Theory』 Sun Moon/MICLIFE(2005)
エレクトリックのアノニマス、モー、ラヒームが新たに結成したトリオのスムースな快作。ここではLevitatorzが2曲のリミックスを手掛けており、特に温かいメロディック・ヴァイブが胸キュンを誘う“That's How It Was(Love Music)”には脳を溶かされます。
(狛犬)

Levitatorz
DJ RyowとShin-Skiによるユニット。過去にタイム・マシーン、プロジェクト・ムーヴらのリミックスを制作している。細やかなサウンドに晴れやかなコスリやネタ使いを加えてライヴ感を意識させるあたりがプロダクションの特色といったところか。MPCやターンテーブルなどのメンバーを加えたLevitatorz 4としてもライヴを行うほか、アルバム制作も進行中だとか。
(一ノ木)

TIME MACHINE 『TM Radio』 Glow In The Dark/バッドニュース(2005)
別掲の『Slow Your Roll』によって日本でも爆発的に知名度をアップさせたタイム・マシーンの、未発表曲やリミックスなどを集めた編集盤。Shin-Skiが“The Wiggle”を、Ryowが“On The Moon”をそれぞれリミックスしたほか、Levitatorzで手掛けた“Matter Transporter”にも注目。
(狛犬)

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