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第18回 ─ 宇多田ヒカル

連載
SPOTLIGHT!
公開
2006/06/29   01:00
更新
2006/06/29   22:17
ソース
『bounce』 277号(2006/6/25)
テキスト
文/内田 暁男

ファンならずとも待望の新作は、あっと驚くサウンドが満載!!


 エレクトロニカ通過後の複雑なプロダクションとコーラス、深くて重い歌詞などが衝撃を与えたバラード“Be My Last”、変拍子にも聴こえる原始的なドラムにテンポ感の異なるメロディーを乗せ、ふたつのヴァースのみで押し切ってしまう“Passion”と、Utada名義での全米デビューを経て昨年リリースされた挑戦的なシングル群において急速に表現を先鋭化させてきた宇多田ヒカル。しかし、それらの楽曲も含むニュー・アルバム『ULTRA BLUE』はそんな歩みすら凌駕する傑作だ。ほとんどのキーボードとプログラミングを自身で手掛けた本作には、スペイシーでエレクトロニックな要素が盛り込まれながら、少ない音数や行間、声、メロディーそれぞれに彼女の濃厚な人間味が凝縮されている。THE BACK HORNの山田将司が参加した“One Night Magic”、そして“BLUE”など、1曲のなかで目まぐるしく場面転換する楽曲群も刺激的だが、シンプルな“誰かの願いが叶うころ”といったバラードも等しくショッキングなのだから、つくづく宇多田ヒカルという人間の〈埋蔵量〉は計り知れません。