UKツアーの途上で辿り着いたスコットランドのストーノウェイ島。ポッタリー(釜)にて職人に着色の仕方をみせてもらう。陶器の型の中に塗料を流して、型自体をゆっくり手で回転させる。流れる塗料はウネリながら偶然に出来る模様を描く。その模様は、白い空を背景にした青い海原のようであったり、強風に吹かれる草原にみえた。
たっぷり塗料を含ませた筆で、陶器にわざと塗料が垂れるように描く流し絵。釜で陶器を焼いている時に塩を投げ入れ、その塩が気化すると偶然の模様が浮かぶ技法。これらは日本の偶然。
細部までコントロールされた音楽は、空気の動きを止める。直感と偶然をエディットした音楽は、空気と対話をする。どちらも好ましい音楽であるけれど、携わっていきたいと思うのは後者。理解不能な偶然と直感を聞き手と分ち合いたい、わたし。
楽器を抱えた素人と玄人が混在する、工藤冬里率いるマヘル・シャラール・ハシュ・バズやコーネリアス・カーデューのスクラッチ・オーケストラ。カーデューも工藤さんも陶芸家の息子。なぜ陶芸の家系からそうした音楽家が歩き出すのだろう?
イギリスのウィリアム・モリスが提唱した〈芸術家と職人の境を無くす〉アーツ・アンド・クラフツ運動。のちに日本でも呼応しつつ独自の〈民芸運動〉が起こる。その中心人物の柳宗悦にイギリス人陶芸家バーナード・リーチは協力をする。そのリーチの助手を務めていたのが、コーネリアス・カーデューの父、マイケル・カーデューだと工藤さんから聞いた。
このツアーの最終地点オークニー島に着く。そこで待ち構えていた会場は、ウィリアム・モリスのデザインによるテーブルクロス、島の素朴で趣味のよい陶器など、美しい手仕事をいたるところで見ることの出来るホテル、ウッドウィック・ハウスだった。これはスコットランドの偶然。
PROFILE
青柳拓次
サウンド、ヴィジュアル、テキストを使い、世界各地で制作を続けるアート・アクティヴィスト。LITTLE CREATURES、Double Famousの一員として活躍する他、KAMA AINAとしても活動中。5月24日にはKAMA AINA名義による待望の新作『CLUB KAMA AINA』をリリース。