妻曰く、春の雨の匂いは犬のごはんの匂いだそうです。
さて、「ミュージシャンです」というのと、「無職です」というのは僕たちにとってほぼ同義であって、「犬は動物です」というのと「動物は犬です」という程度の違いしかありません。あえて補足するなら、「夢見がちな無職です」というのが一番的確な表現かもしれません。その〈夢見がちな無職〉の人たちと、先日広島に演奏しに行く車中、ふとした拍子に中国の話題になりました。
それは、日本の人口を約1億とし、中国の人口を約10億とすると、確率的に言えば、日本で300年に1人という天才が中国では30年に1人の割合で産まれる、というような話です。学問などは少し後天的な要素(社会情勢やその国の教育システム等)に左右されるので必ずしもその通りではないですが、もっと先天的な素質、つまり、〈もの凄い美人〉というのは確実に現れる筈です。江戸時代から2006年現在に至るまでの300年で最も美しい女性が、中国のどこかに2人ないしは、3人居る計算です。ただ、〈美しい〉という価値観は個人や時代によって異なるので、もっと物理的な例を挙げると、たとえばここ30年のホルモン・ミラクル、叶姉妹的な女性が3年に1組の割合で現れる仕組です。車内では更なる猥談になり、結果、「中国、夢あるね」という話に落ち着きました。
帰り際に今度は、恋する確率の話になって、「高校の時、一学年に2人は好きな子おったやろ?」と誰かが言い出して、ということは一学年男女300人の中に2人は恋する確率があるということになります。日本の若者の人口がどれくらいなのかは分かりませんが、仮に1,000万人としたとき、7万人近い人に対して恋に落ちる可能性があるわけです。仮に1日1人に対して告白したとき、7万人に告白するのに約200年かかります。そうなると何の為の人生だかわからなくなります。だから、〈最愛の伴侶を見つけた人は、死ぬまでに7万回、愛を伝えましょう〉というオチを今思いついたのですが、あまりに嘘臭いのでやめます。
〈夢見がちな無職たち〉を乗せたバンドワゴンは、防犯上、まっ黒です。
今月のBGM
DEBUSSY/RAVE
『String Quartet Keller Quartet』
ワーナー
確か、安かったという理由でこのCDを買ったので、他の人の演奏でもかまわないのですが、ドビュッシーの曲の中ではこの弦楽四重奏曲が一番好きです。もともとフランスの作曲家はあまり好きじゃなかったのですが、この曲は純粋にかっこいいです。
PROFILE
次松大助
99年に大阪で結成されたオリジナル・スカ・バンド、The Miceteethのヴォーカリスト。5月21日に日比谷野外音楽堂〈MAZRIの祭〉に出演する他、各地にてライヴが決定。また、待望のニュー・アルバムの制作も進行中。その他の最新情報は〈www.miceteeth.net〉にてチェックを!!