キレイなものに目がないの

ありとあらゆる奇妙なサンプリングで、「ピンクフラミンゴ」的な狂ったエレクトロ・ワールドを展開してきたドゥルー・ダニエルとMC・シュミット。このマトモじゃない2人組、マトモスのニュー・アルバム『The Rose Has Teeth In The Mouth Of A Beast』は、やっぱりマトモじゃない。今回は10人の有名人に捧げた10曲を収録するという仕掛けで、ビョークからクロノス・クァルテットまでゲストも豪華! お喋り好きな2人が、ラップトップ片手に語ってくれたよ~。
──曲ごとに捧げた人選の基準は何ですか?
ドゥルー「〈僕らが日頃から尊敬している人たち〉ってことだね。みんな一癖も二癖もある。例えばヴァレリー・ソラナスは政治活動をしていたのに売春婦になり、最後には路上で野垂れ死んだ。彼らの人生はとってもジューシーで、音で表現するには最適なんだ。彼女に捧げた曲“Tact For Valerie Solanas”では、牛の消化器官で音を作ったよ」
MC「4~5人選んだところで〈みんなゲイだ〉って気付いた。で、結局全員ゲイになったんだけど(笑)、これはゲイ・アルバムじゃないからね!」
──ラリー・レヴァンに曲を捧げていますが、クラブに行ったりすることは?
MC「私はハウスが好きじゃないからラリーを入れるのには反対したけど、ドリューがすごく悲しんだから、やむなく入れたよ」
ドゥルー「だって、僕は18歳のころにゲイ・バーでダンサーをしてて、そこでMCに出会ったんだもん。ゲイ・バーやクラブがなかったらマトモスだって存在してなかった。ほら、これがその時の写真(ラップトップ上に、股間に魚を挟んで全裸で踊る若き日のドリューの姿が……)」
──えー、ジョー・ミークについては……。
ドゥルー「ちょっと僕に似てるんだよね。彼は死の直前にパラノイアになって、音や光を遮断した部屋に籠もって音楽制作をしてたんだ。その熱中ぶりは他人事じゃない」
MC「ドリューがミーク状態になったら、私が外に連れ出すのさ。〈ごらん、こんなに良い天気だよ〉ってね(ニッコリ)」
──ダービー・クラッシュ(ジャームス)は唯一ロックからのエントリーですね。
ドゥルー「ジャームスは最高にハードコアで、僕の大好きなバンドさ。彼はひどいシンガーだって言われているけど、彼が書く詞は本当に素晴らしいんだ」
MC「私はサウンド的には興味はないが、やはり歌詞の美しさは感動的だね」
──そういえば2人とも文学教師でもあるんですよね。そういった意味で、ウィリアム・バロウズはもちろん、パトリシア・ハイスミスを選んだのは興味深いです。
ドゥルー「彼女の作品は授業でもテキストとして使ってるよ。日常をテーマにしながら、その裏に隠された恐ろしさを見せる作家だ。だから僕らも、普通の音が不快に聴こえるような音に挑戦したんだ」
MC「テルミンの上にカタツムリを這わせたりね!」
──ハイスミスといえば映画「太陽がいっぱい」の原作者として有名です。2度映画化されて、犯罪者のトム・リプリー役をアラン・ドロンとマット・デイモンが演じてますが、どちらが好みですか?
ドゥルー「マットはセクシーだけどリプリー役じゃないよね。ジュード・ロウのほうが合ってると思う」
MC「だね。私は断然ドロン派だ(以下、キャストの話で延々盛り上がる……)」
そのほかにも、哲学者であるヴィトゲンシュタインの著作をビョークに朗読させたり、肥料を薔薇にかけた音をサンプリングしたり。やりたい放題の本作はマトモス版〈世界偉人トロニカ〉だ。ぜひ一家に一枚!
▼マトモスの作品を紹介