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第4回 ─ 〈bounce.com4周年記念〉菊地成孔のチアー&ジャッジスペシャル 菊地成孔が2005年の音楽界を振り返る

第4回 ─ 〈bounce.com4周年記念〉菊地成孔のチアー&ジャッジスペシャル 菊地成孔が2005年の音楽界を振り返る(2)

連載
bounce.com 4th Anniversary Special
公開
2006/01/12   13:00
更新
2006/01/12   20:43
テキスト
文/ヤング係長

――ネットでパクリ問題が標的にされてしまったことと、人気の陰りは無関係ではなかったのかなと思います。

菊地 “ロコローション”のクレジットを書き直したわけだよね。あれは自主規制だ。訴訟などではなく、外部からの攻撃、もっと極端に言うと、ネット界倫理にやられたと思ってる。(以前に)京都の美術大学で講演するために、ギリシャ時代から今までの音楽の、メロディーの歴史をもう一回調べたのね。メロディーには当然〈所有権〉の問題が出てくるんだけど、今〈著作権の侵害〉の対象っていうのは歌詞とメロディーに関してなんだよ。リズムや和声進行やアレンジは形式性というか様式美として、誰が使ってもフリーという事になってる。歌詞は言語だから今、とりあえず置いておくとして、メロディーが同じだと「侵害された」って訴えられちゃうわけ。

 んでよく〈3小節までならパクってもオッケー〉とか言われるけれど、所有権を包含する商法上の工業的所有権の記述をどこまで調べてもそんなこと一文字も書いていなかった。あれは慣習法っていうか、文化的な幻想だったわけ。ORANGE RANGEに関しては、実際に訴訟を起こされたわけではない。でも、調べてみたら圧倒的なネット世論のバッシングがあった。それが現代的だと思った。あんなに器用に見事にパクっているんだから拍手の一つもしてやればいいのに、極端なネット世論による攻撃を受けて、流石に〈作曲ORANGE RANGE〉のままにはできなかったわけだ。俺がそれを見て感じたのは、ネット世論/倫理という新しい世論/倫理の発生ね。テクノロジーができるとそこに世論/倫理ができる。新聞の時代は新聞世論/倫理で、テレビができたらテレビ世論/倫理になる。今はネットがあるからテレビ世論/倫理を追い抜いて、ネット世論/倫理がセンターに来ている感じがする。

――ネット世論/倫理といえば、〈のまネコ問題〉というのもありましたね。

菊地 あれは結局恐喝した本人が捕まったけど、それは氷山の一角であって、あのネコを大企業が搾取することに対して強烈な嫌悪を表明した人が沢山いたわけ。〈所有権と欲望〉という歴史を紐解くに、ヨーロッパで国境が所有物として問題となったように、或いは今でも38度線が問題であるように、〈人間の所有する欲望っていうのは輪郭線にしか宿らない〉と仮説できる。時間や空間に所有権は宿りずらい。で、輪郭線っていうのが大切で、メロディーは音楽の輪郭線だし、歌詞/言語っていうのは、概念の輪郭線でしょ。

 んで、あのネコは輪郭線によって生成された生物で、輪郭線メディアである掲示板にしか現れない純粋輪郭生物じゃない。漫画みたいな、手書きの輪郭線よりも、デジタル情報の輪郭線のほうが純化が凄い。それに愛着を持って使ってきた人たちの所有欲は凄まじいものがあると考えられる。それが大企業に侵害されると感じたときの悪意は、ORANGE RANGEがメロディーラインをパクったことに対して怒った人たちが持っていたものと同じ種類のものだと思う。それが共にネット世論から出てきたことが重要だと思うな。のまネコと並んで、05年の文化的なトピックと言ってもいいんじゃないかな。

――では、なにかものを作っている人たちは、これからはネット世論を意識していく必要があるということなんでしょうか。

菊地 ネット世論に歓迎されるものを用意したほうがいいよね。音楽配信だって、コンピューター・ネットワークによるビジネスって言い換えてもいいわけだから。要するに、全てがネットの中で行われるようになっているわけでしょ。極端な話をすれば、ネットの中で「こいつダメだ」と言われたら潰される時代がすぐそこまで来ている。今、各社の頭のいい人が集まってネットにどう迎え入れられるかを考えてるはずだよ。そんでとりあえずそれは〈萌え〉じゃないかって話をしているような気がするね(笑)。〈萌え〉というのは、欲情の純粋輪郭線だからさ。

――倖田來未やBennie Kのように、萌えとはまた別の支持を受けている人もいますよね。

菊地 まあ、アゲインストは常にあるからね。倖田來未はエロカワのギャル文化のトップに立っちゃったから今や巨大だけど、アニメともちょっと組みますよ。という履歴はあったわけで。まあ、彼女たちがどのくらい支持されるのかが一つの、所謂バランス感覚の基準になるんじゃないかな。少なくとも純ロリじゃないわけだし。勇ましい女の子たちでさ。Bennie Kなんて、うーっすらだけどレズビアニズムまで感じるからな。俺だけかも知れないけど(笑)。

――では、05年は、ロリコンとネット世論が目立った年で、今年はそれがより顕著になる可能性があると見ているわけですね。ほかにはどんなことに注目されていますか?

菊地 とりあえず、まずはテレビ対インターネットだね。エイベックスはネット活用。ジャニーズはネットを避けている。今後、とうとう乗り出すかも知れないけどさ。この両巨頭の動向は注目すべきでしょう。テレビ世論、テレビ・カルチャーと、ネット世論、ネット・カルチャーは、まだ完全に離反的じゃなくて、ネットが扱うものとテレビが扱うものは多く被っている。だけど、テレビ世論と、ネット世論が、同じ対象に違う評価を与えるっていうのが面白い。例えば、平井堅がネットとテレビで評価のされかたが全然違ってたりとか、SMAPはテレビでの評価のほうが圧倒的に高いとか。そういうことが売り上げにどう反映していくのかっていうのが問題になってくる。

――もうひとつ、携帯という文化もありますね。ネット未満という層がいる。

菊地 携帯にはテレビもネットも入ってるからね(笑)。配信ビジネスのキー・アイテムとしても伏兵だね。携帯電話とは如何なるメディアか?っていうのは話がでかすぎるから出来ないけど。

――では、06年以降はテレビ対ネットがチャート上でも見て取れるようになるかもしれないと。ネット配信だけでヒットする番組や曲も当然出てくるはずですから、テレビの人が知らないヒットが出てきますよね。

菊地 うん。どんどん極化していくと思うよ。

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