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第4回 ─ 〈bounce.com4周年記念〉菊地成孔のチアー&ジャッジスペシャル 菊地成孔が2005年の音楽界を振り返る

連載
bounce.com 4th Anniversary Special
公開
2006/01/12   13:00
更新
2006/01/12   20:43
テキスト
文/ヤング係長

今回のチアー&ジャッジは、「CDは株券ではない
」で恒例となっていた年末総括インタビューをお届け! 奇才・菊地成孔が年間チャートを片手に、05年の音楽界を振り返り、分析・アナライズ。さらに音楽界から見た社会・文化・風俗についても総まとめでお送りいたします。※05年上半期の音楽界を振り返る総括インタビューはこちら。

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――05年前半の総括では、ケツメイシの“さくら”が90万枚を超えていて、ミリオンに届くんじゃないかという話をしていましたが、実際にはミリオンまで届かなかったんです。その代わりといいますか、突然出てきた修二と彰の“青春アミーゴ”が今年唯一のミリオンに達してしまいまして、ケツメイシとしては年間トップ・シングルをかすめ取られたような形といいますか。

菊地 なるほど。“青春アミーゴ”はある種のキャラクター商品だよね。「トラジ・ハイジ」の“ファンタスティポ”がテストランとして上手くいったんで、次もやってみたら、思いのほか大当たりと言うことだろうと思うし、そういうケースはよくある。振り付けも楽曲も、力抜いてやったら凄く上手くいって。

 曲自体は死ぬ程聴いたんだけど、これは〈地元〉っていうことでしょう。アメリカだと移民の問題が常にベースにある。ローライダーっていうヒスパニックやプエルトリカンのアイコンが、まあシャコタンのことなんだけど(笑)、地元じゃぶいぶい言わせてるんだけど、ニューヨークとかロスに行くと全然イケてないと(笑)。それで夜になるとシャコタンをぶっとばすというのが80年代にあった。アメリカのヤンキーってことで20年前にそれ見てたんだけど、日本版のパーフェクトなやつが遂に出たなと。

――その地元意識というのはヤンキーっぽい考えかたのようにも思えますが。

菊地 そうそうそれそれ。でも日本の場合はアメリカと比べると、言葉や文化、人種が違ったりという形式がさほどハードコアではない。でもほら、歌舞伎町リトルコリアの住人として言わせてもらえばさ(笑)、例えば“青春アミーゴ”じゃなくて“青春チング”までJ-POPが……まあK-POPでも良いんだけど、扱ったらなかなか良いよね(笑)。現にそういう人達はいるんだよ。在日のホスト。っていうのは、俺の知る限り歌舞伎町には居ない。だから、半島ではブイブイ言わせてたけど、東京に出てきたらホストに負けちゃって苦しい。とかいうケースがあるのかどうか、妄想の域を出ないんだけど(笑)。

 でも、昔からフォークソングなんかでは、恋人を田舎に置いて東京に出て行くとか、そういった内容の曲は多かった。地方と東京の問題は、まだ全然死んではいない。そんな中で、こんなラティーノな感じで出てきたのが良かったんじゃない? 実は半ばコミック・ソングなんだけど、ジャニタレさん達は、今やバラエティにも充分耐えられるだけのスキルを全員が持ってるしさ。

――ジャニーズのタレントに求められていることが増えていってるんでしょうか。

菊地 どんどんジャニーズがやっていることが多角的、本格的になっているでしょ。前まではZetima風もAVEX風も慎重に避けていた気がするんだが、最近はそのタガも外れたように見える。なんにせよ“青春アミーゴ”は上手くやったと思うよ。コンセプトも楽曲も振り付けもパーフェクト。今でも憶えているのが、「CDは株券ではない」で小倉優子を予想したでしょ(笑)。テーマが大和撫子で着物を着て、後ろに仕掛けたチームがいるのはわかっているんだけれど、聴く前からこんなものはどうでもいいという(笑)。そういうことを考えるにつけ、って、ゆうこりんと比べたら失礼みたいな話だけどさ(笑)、仕掛けがちゃんと当たる。というのはファンならずとも爽快感というか達成感があるというか、嬉しいよね。

――ケツメイシとミスチルが2位、3位と続いています。

菊地 ケツメイシは上半期に話したとおりクオリティの高いものを作って、凄く普通に健全に頑張っている。ミスチルはロックのリッチマンという意味では不動のものがあるよね。ミスチルが3位ということは、この国のおっさんというかさ、まあ、ミスチルのメインファン層は若い人なんだろうけどさ、ロリコンじゃないロマンチストおやじ達がグッときているんじゃないかと思うと面白いね。彼等はロリコンではないという感じで(笑)。

――なるほど(笑)。じゃあ、ロリコンなおっさんはどんな音楽を聴いているんでしょうか?

菊地 ロリコンとアニヲタとアイドリアンを雑に一緒にしちゃいけないのは前提としても、〈ロリコンのおっさん〉という人々……まあ俺と同世代としてさ(笑)、彼等はシングルCDなんてどうでもいいんじゃないかな。ゲームとかアニメとか写真集とか、いろいろアイテムが他にあるから。CD音楽、特にシングルにがっつり反映されたのは、05年は“ハッピー☆マテリアル”に尽きるよ。というか、ロリコンっていう言葉の意味が変わってきているような気がするんだ。〈大人が小さい子供を愛する性倒錯〉っていう古典的な定義を遙かに逸脱して……まあ、ナボコフの「ロリータ」の新訳が出た段階で。といおうか(笑)、〈本人も対象も全員が幼児化〉していくという全体主義的幼児化に動いているでしょ。幼女殺人犯は本人自身もロリータである。というね。06年以降は、幼児化社会としての日本がますます照らし出されると思うんだ。CDの売り上げチャートも本の売れ行きもなにも。

――中島美嘉が今年は映画「NANA」のヒットもあってこれまでとは違った露出をしていましたがどう思われました。

菊地 まあ、ありきたりな事言うけど、漫画だよね。売れる漫画は、売れるCDより売れる。規模が違うんだ。「NANA」、「はちクロ(はちみつとクローバー)」、「のだめカンタービレ」っていう05年の金銀銅メダルは、あれは全部美大というか、アートスクールが舞台になっている。アートスクールみたいな限られた狭い世界の話が極端な一般性を持った。特殊な大学の中のある小さいサークルの物語がものすごい癒しを与えたと。町に出るとアキバ系さん達とかギャルさん達みたいな怖いのが一杯いるでしょ今(笑)。90年代にみんなでボーダーを着ていい調子で青春を生きてきたネオアコみたいな人たちの世界がどんどん狭くなって、下北沢だけ。みたいになりかけて、それの箱庭みたいな形で、郊外のアートスクールのサークル内にパラダイスを見つけた。という側面も無かったとはいえないんじゃないかな。

――「CDは株券ではない」の単行本でも何度も出てきたORANGE RANGEの売り上げが、減ってきているんですよ。新しいアルバム『ИATURAL』がミリオンに届かない状況です。

菊地 「CDは株券ではない」という本自体がORANGE RANGEの本と言ってもいいくらいだった。あの本が準備されて出版される間にORANGE RANGEのピークは来てしまったのかもしれない。〈この先どうなるかわからない〉感じがすでにあったし。細かいフラグメンツを入れると沢山入っているんだけど、鋳造の大元は2曲という〈2曲パクリ〉の完成形を“ロコローション”でやってみせたことで、音楽的なパイオニア感は一段落着いてしまったのかもね。

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