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第53回 ─ フィッシュマンズのライヴDVD

連載
NEW OPUSコラム
公開
2005/12/15   13:00
更新
2005/12/15   18:28
ソース
『bounce』 271号(2005/11/25)
テキスト
文/内田 暁男

 ライヴ中盤に指を突き出して佐藤伸治がこう言う。「快調!」。茂木欣一も「とんでもない年」と語る、フィッシュマンズの絶頂期である〈96年〉の空気感を真空パックしたのが、ライヴDVD「若いながらも歴史あり 96.3.2 @新宿LIQUID ROOm」だ。

『空中キャンプ』リリース後、一気に跳ね上がった彼らへの期待に応えただけでなく、後の『LONG SEASON』へと連なっていく〈とんでもない〉季節の始まりの瞬間が本作には刻み込まれている。一切の妥協を許さないアレンジで練りに練られた全18曲(既発ベスト・ライヴDVD「記憶の増大」との重複3曲は別ミックス&編集で収録)。アイデア豊かな音の重なりと隙間が生むマジカルな横揺れグルーヴについていけば、そこはもう未知の世界だ。所狭しと動き回りながら歌う佐藤伸治のファニーかつカリスマティックな佇まい、曲中で秘かにアフロヘアになったりするベーシスト=柏原譲の寡黙さ、ひたすら楽しそうにドラムを叩く茂木欣一のピュアな姿……。緊張感を保ったアンサンブルがめまぐるしく変わりながらラストの2曲“ナイトクルージング”“新しい人”へと収束する頃、フロアに現出したなんともいえない異次元の空間を感じてほしい。音楽はここまでいける、と気付かされるはずだ。

 ベスト・アルバムのリリースや〈RISING SUN〉への出演、SHIBUYA-AXでのワンマン・ライヴと続いてきた再評価の波のなかで蘇った、あの96年の奇跡。その衝撃はいまもまったく変わることがない。未体験の方は本作と同時にリリースされる、96~98年のライヴ音源を収録したシングル『いかれたBaby/感謝(驚)/Weather Report』から触れるのもアリです。12月にはいよいよラスト・ライヴ〈男達の別れ〉がDVD化されますよ!
▼文中に登場した作品を紹介。