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第77回 ─ タワレコ発のパンク本が完成!!ってOi! Oi!、どんな本に仕上がってるNo!?

連載
360°
公開
2005/12/08   16:00
ソース
『bounce』 271号(2005/11/25)
テキスト
文/bounce編集部

タワレコ発のガイドブック〈STANDARDS〉シリーズの記念すべき第1弾は、2006年に生誕30周年を迎える〈パンク〉。タワレコ・バイヤーを中心に、現場ならではの感覚でさまざまな視点からパンクの魅力に迫った一冊となっている。ということで、この「bounce book -PUNK ROCK STANDARDS」の編集を担当した、三十路を越えてサーファー・デビューした瞬間にアタマをケガした坊主頭の大石始と若手のホープである加藤直子、NMNLメディア事業部の2人に話を訊いてみよう。

――このガイドブックの編集をやってて、いちばん印象に残ったことは? 

大石(以下:O)「僕はパンクっていうものを外から見るっていう立場に意識的に自分を置いていて、パンクにすっごい入れ込んでいるタワレコのバイヤーさんやライターさんがなるべくやりたいことをやれるようにしよう、って最初から心掛けてた。で、彼らといろんな話をしていると、本当にパンクが好きだなぁって(笑)。本当にパンクによって人生変わっちゃったんだろうなぁっていう人たちでしたね。そのパンクへの〈思い〉みたいな部分が、音楽として好きっていうのを越えているなっていうのをすっごく感じて。例えば、アーティストひとり、ディスクガイド1枚とっても、〈これは違う。だったらこっちがいい〉って、そういうことに対する意識がすっごく高い。なので、この本に関してはそういう〈情熱〉の部分をできるかぎり入れ込みたいなあって思いながら作ってた」

加藤(以下:K)「フツーのライターさんと違って、今回書いていただいたバイヤーさんたちはひとつひとつの仕事への思い入れが強くて、自分の発言への責任感とかからホントに好きなんだなあっていうのを感じたので、こっちがヘタなことできなかった。結局、〈これは載せておかなくちゃ!〉って彼らが教えてくれたバンドのうちの80%ぐらいしかフォローできなかったんだけど、単純にパンク・バンドの数のあまりの多さにビックリした(笑)」

O「あと、バイヤーさんやライターさんもそうだけど、横山健さんにお話を窺ったり、いろんな方からコメントをもらったりして思ったのは、パンクのある種〈純粋さ〉みたいな、そういうところにみんな惹かれているんだろうなっていうこと。いろんなものに対する怒りや10代の頃に感じる感情だったり、そういったものをギュッと詰め込んだものがパンクなんだなあって。〈パンクってどこまで入るんですか?〉っていろんな人に訊かれたんだけど、〈今回はパンクって言えちゃうようなやつを全部入れよう〉っていうことで作った。スタイルじゃなくて、そういったスピリットを持っているというのをベースに」

――サウンドのスタイルや構造ではない、っていう意味ではジャズに近いのかもね。現在でも、そのフィーリングや雰囲気でジャズっぽいと言われる新しいものがどんどん生まれてきているし。

O「そう、それにブルースも。ブルースって、極端に言うとアメリカのさまざまなブラック・ミュージックの根底になっている。それを意識して聴いていなくても、実はそのいちばん奥にはブルースっていうものがドーンと土台になっていて。で、パンクも現在はそういうものなんだろうなって思った。日本のライヴハウスで活動しているバンドやビルボードのTOP10に入るようなバンドでも、一聴パンクとして聴こえないようなものの奥にもドーンとパンクっていうものが横たわってる。だからブルースと同じように、現在のポップ・ミュージック・シーンのなかでパンクはルーツ・ミュージックのひとつなんだなあって」

――この〈PUNK ROCK STANDARDS〉は、これまで出版されているパンク本とどこが違うの?

O「ある程度パンクを突き進めてる人にとっては必要なものだと思うんだけど、いままで作られてきたパンク本は専門的なものが多い。セックス・ピストルズとランシドとグッド・シャーロットしか聴いたことがないような子たちが、もっとディープにパンクも聴こうと思った時に読みたい本がない、というのが実感としてあった。でも、単純に初心者向けってなっちゃうとそれはそれでちょっとつまんないなあ、と。これはbounceのコンセプトといっしょだと思うんだけど、〈敷居は低くして、奥はディープに〉っていうのをすっごく考えた。そういう切り口の本が現状ない、っていうところからスタートして。なので、この〈PUNK ROCK STANDARDS〉を読んでもらえば、初心者っていうか聴きはじめたばかりの若い子にとっては、パンクっていうものがある程度わかると思うし、書いている人たちが、っていうかパンクと心中しようとしている人たちがどれだけ情熱を持ってるかっていう勢いみたいなところが伝われば、パンクのおもしろさがよくわかるかなって思う。構成としては、いわゆる決まりきったものだけじゃなくて、こんな切り口があるんだ、みたいなところをチョコチョコ入れてるんで、ある程度パンクのことを知っている人でもおもしろく読めると思いますよ!」

K「ただコアなものじゃなくて、初心者のためっていうだけでもないんだけど、わからないことや知らないことをいまさら人に訊けないという状況があるよな~って実感していたから。そういう意味では、貴重な情報や基本的な知識の数々をちゃんと教えてくれる一冊に仕上がったと思いますよ!」

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