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第75回 ─ 10人の歌姫が至福の時間を届けてくれる、ビートルズ・ララバイ集!!

連載
360°
公開
2005/11/04   13:00
更新
2005/11/04   13:03
ソース
『bounce』 270号(2005/10/25)
テキスト
文/ダイサク・ジョビン

 ビートルズのカヴァー&トリビュートという企画盤はこれまで世界中で数多く作られているが、今回リリースされる『Apple of her eye りんごの子守唄』はWORLD STANDARDでも知られる鈴木惣一朗が全面的にプロデュース、ってことでひと味違ったユニークかつ内容の濃い作品となっている。今作のコンセプトは、日本の女性ヴォーカリスト10人による、大人も子供も聴けるビートルズ・ナンバーによる子守唄(=ララバイ)、というもの。

「ビートルズは汚い言葉を使ってなくて、基本的には愛がテーマになっている曲が多い。なので、〈太陽〉とかを扱った希望のあるものを選曲した」と鈴木は言う。また、ジェイソン・フォークナーの『Bedtime With The Beatles』も今作を作るうえでの指標のひとつになったという。

「この企画以前から聴いてたんだけど、曲のテンポやキーとかアレンジをいじってなくて、(原曲の)雰囲気を変えずにインストゥルメンタルにしていたのね。それがすごい良かったんで、今回ビートルズの持っている空気感は絶対に消えないようにしよう、という点だけは気をつけた」。

 ということで、彼を含めて青柳拓次、高田漣、CINEMA dub MONKSらが3つぐらいのアコースティック楽器というミニマムな編成によって、どの曲もシンプルに、原曲とほぼ同じアレンジでグッと後ろに下がってバックを務め、それによって女性ヴォーカリストたちによる歌が前面に出るといったサウンドが今作の大きな特徴といえるだろう。

「結果、自分に必要なもの、本質的なもの、コンフォタブルなものだけを必要なぶんだけ欲しい――そういったシンとして凛としてっていう〈今〉の空気感に合った作品となった」と彼は言う。また、「その空気感が(今回参加した)すべてのヴォーカリストに共通しているエコーというかトーン。みんなすごいエネルギーがあるのにシンとしていて、女性的で何かを内包している。凄くグルーヴィーだけど声高にはやらない。表現をすべて出すんじゃなくて凄く押さえ込んでいる感じ。なので、空間があるから何度も聴けるっていうのかな」。

 途中で挿入される、LITTLE TEMPOでも知られる田村玄一のスティールパンによるエッソ・トリニダード・スティール・バンド風な“In My Life”や、“I 'll Follow The Sun”といったインストも歌心を伝えてくれる。夢見心地で美しくて神秘的でリラクシンな今作は、ビートルズの普遍的なメロディーの素晴らしさを改めて楽しむことのできる絶好の機会とも言えるでしょう。

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