燃ゆるソルジャー! 野太い声を武器に問題提起し続けたあの男の魂が迸るレア音源集!!

ピーター・トッシュの人物像などなどの事柄はいろいろな人がいろいろ(でもないのですが……)述べているのでそちらを参考に。〈本物のバッド・ボーイだ〉とか、〈バッド・ボーイのイメージを後年は自己演出していた〉とか、そんな話は自分で判断してください。第一、まずは音楽について触れなきゃならないんだから、ここでは。
初期のレコーディング作品の頃からこの人の声は素晴らしい。力強くて、太くて、深みがある。そして歌いたいと思ったことは遠慮なく歌いきる。〈He Just Sing What He Want To Sing〉とはよく言ったもので、常にストレートな表現であらゆるものをバッサリ。〈弱きを助け強きをくじく〉を地でいくメッセージ・ソングを数多く残している。
と、ここまでもよく知られた話ですね。で、肝心の彼の音楽の中でも上記の事柄が大きな特徴なのは間違いない。彼はこの部分を最優先させていただろうし。〈最先端のサウンドなどに目くばせするヒマがあったら、そのぶんオレは歌いたいことを歌うぜ〉という男の生き方が滲み出たかのような……。つまり、サウンド面にまったく興味がなかったわけではないが、〈最優先されるべきは他にあり〉な音楽家だったと私は認識している。もちろんサウンド面に見るべきものがなかったわけではなく、それよりも彼の肉声、歌が突出してしまうのだ、その個性ゆえに。
78年に行われた〈ワン・ラヴ・ピース・コンサート〉でのピーター・トッシュのライヴを収録した『Talking Revolution』でもそのテンションは極めて高い。ことに後期のトッシュ作品(ソロ・アルバム)が好きな人にはたまらないのではないだろうか。ローリング・ストーンズのファンにも……なんてのは余計なお世話か。でも正直、それ以外の人たちには強烈なインパクトを与えられるかどうか。ギター、パーカッションなどの演奏は好き嫌いが分かれるところでしょう。ハッキリ言って退屈なパートもありますよ、人によっては。“Equal Rights”のバック・コーラスなんて、いかがなものかと思います。でもね、このたびリリースされた2枚組のCDでもう一枚が素晴らしい。未発表アコースティック音源が11曲。これは筆舌に尽くし難い。
ちょっとギター弾きすぎ、と思う曲もないではないけれど、この盤を聴くとそれもこの人らしいと思えちゃう。そう言えば、初期ウェイラーズのアコースティックな名曲の数々を歌っていたのは彼だった。それに負けず劣らず、生身の男の力強さが伝わる曲ばかり。何曲かは感動的ですらあります。
▼ピーター・トッシュの作品を紹介。