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第24回 ─ TYÜNK、山崎まさよし、塚地武雅・堤下敦・梶原雄太の3枚を分析!

連載
CDは 株券 ではない ― 菊地成孔の今月のCDレビュー&売上予想
公開
2005/08/24   21:00
更新
2005/11/07   20:09
テキスト
文/菊地 成孔

DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN、SPANK HAPPYなどの活動や、UAやカヒミ・カリィ他数多くのアーティストのサポート、また文筆家としても知られる邦楽界のキーパーソン、菊地成孔が、毎月3枚のCDを聴いてレビュー。そしてそのCDの4週間での売上枚数を徹底予想します! 残念ながら今回で最終回です(書籍が発売されたばっかりなのに)!

うっひょー!でけましたー!ドカーン!!皆さん買って下さいね!!サイン会もやっちゃいますよー(※詳細はこちら)!

 「CDは株券ではない」(菊地成孔著)8月26日ぴあ社より発売!!

うふふー。余りのことにもっかい書いちゃおうかな

「CDは株券ではない」(菊地成孔・著)8月26日ぴあ社より発売!!!!!!!

うおー何かもうすごく盛り上がって来ちゃった感じ~! 文化祭初日に急性アルコール中毒で潰れてゆく一年生並みに!!! こうなったらもう何度でも書いちゃいますよ~!

「CDハ株券デハナ~イ」(ヒラリー・クリントン・著)9月11日アメリカ国防総省より発売!!!!!!!

すげー! 元大統領夫人!! 一体何のために!!!

「ダビンチ・コードはハリーポッターとはぜんぜん関係ない」(ブリジッド・ジョーンズ著)!!!

渋い! 渋すぎる! 「ない」しか合ってないし!!

「誰が何と言おうともう民営化するしかない」(小泉純一郎著)!!!!

出た!息の臭いオッサンがクスクスしそうなだけのつまならい時事ネタだ!興奮してきた!!! うおー!うおー!うおー!!!

「貴乃花と若乃花は叶姉妹とおんなじで実は兄弟ではな……

菊地さま(涙)

何だよHくん。全読者を一人残らず巻き込んですっかり盛り上がってた所だったのにー!

お世話になります(涙)

はいはーい!

いきなりですが、本連載は今回で最終回となります(涙)

ええっ!!?

数多くの声援とクレームの山の日々も本日で終了であります(涙そうそう)

マジで……

菊地さま本人が単行本の後書きでいきなり決めたんじゃないですか!!! 誰の相談も無しに!!! びっくりしましたよ印刷所で!!!

……そうか……まあ……でも仕方ないよね…………

リアクションがおかしいです。

うははー。バレたー?

菊地さまは悲しくないのですかううう(涙そうそうそう)。単行本が無事発行したばかりというのに……。

何で? ぜーんぜん悲しくなんかないよ! 何故かというと連載は企画リニューアルして継続するからでっす!! 今回の最後に新企画の説明があるのでお楽しみに!って、さっきまでHくんと打ち合わせしていたところじゃないか! ウソ泣きなんかしちゃってもう~。ふふふ~ん。 ┐('~`)┌

珍しく顔文字なんか使わないでください。ウソ泣きなんかじゃないですようううううう(涙そうそうそうそうそう)

わかったよわかったよ。ちゃんと御挨拶しますよ。だからそうそうそうそう言うのは止めなさい。何でもかんでも同意することによって分かり合った感を安直にゲットしようとしてる人みたいじゃないか。

ううううううー!(滝の如く涙そうそう)

(紋付き袴姿で土下座しながら)全地球16億人に及ぶ愛読者の皆様。皆様の御贔屓、御愛顧、御指導御鞭撻、そして御トラックバック、御抗議、御恫喝、等々、約2年間に渡り、愛され、そして時に憎まれ、時に励まされ、時にスローライフ、時に長渕剛、と。まるで割り切った援助交際の様な当連載でしたが、単行本の出版に伴いまして、今回にて無事最終回を迎えることとなりました。「CDは株券ではない」と「スター・ウォーズ」は終了しますが、J-POPと市場経済、そしてフォースの暗黒面は永遠に不滅です。そうだ。タワーレコードとぴあも永遠に不滅です。遺憾ながらわたくしはCDの売り上げ予想に成功したとは言えませんが、必ずやダコタ・ファニングが跡を継ぐことでしょう。

ううう(涙を拭っても拭っても拭い切れぬままに)。読者の皆様ありがとうございました。菊地さまはこの調子。泣いてばかりもいられません。それでは最後の答え合わせであります(※第23回~ハッピー・マテリアル、D-51、YUKIの回の答え合わせは、新連載の初回に掲載します)。ううう。

はーい!(声優風に)最終回も元気でいってみるくー!(KONISHIKI風に)


■SINGER SONGER “初花凜々”
予想枚数 85,000枚 → 売り上げ枚数 118,000枚(発売4週目)

■Dragon Ash “crush the window”
予想枚数 70,000枚 → 売り上げ枚数 82,000枚(発売4週目)

■松任谷由実 “ついてゆくわ”
予想枚数 90,000枚 → 売り上げ枚数 29,000枚(発売4週目)
  ※オリコン調べ

最終回というのにやはり全ハズレでした……。ユーミンが3倍付け、他の2枚は少なめの予想であります。菊地さまが感じているアーティスト感(言ってみれば70年代対90年代)が裏目に出たような形になってしまいました。ちなみに、この答えが出た週はサザンの過去シングル44枚の再発が全てチャート100位以内に入るという異様な事態が起こっておりまして、チャートがサザンだらけでありました。

なんだよー。〈8低9高〉って言ったって……と、この答え合わせに対するコメントは単行本に収録されているのでそちらをお楽しみに!なんつってHくん!単行本の商品価値もアゲアゲにしてみましたよー!わっしょーい!

ううううそんな事言ってもコメントはたったの4行です。もういいです。それでは、今月のアーティスト紹介に入らせていただきます。うううう。

・TYÜNK
 インディーズで100万枚を記録したHi-STANDARDのヴォーカル兼ベーシストのソロ・ユニット初作品であります。バンドが現在活動休止中ということもあり、多くの邦ロック・リスナーが期待している作品と言えそうです。また、彼は本作の発売日と同日インディーズからもCDをリリースすることが決まっております。

・山崎まさよし
 今年デビュー10周年を迎えるシンガー・ソングライターであります。ブルース的要素を持っているアーティストでは、最も成功している人と言えるのではないでしょうか。彼は俳優としても活躍しておりまして、本作はその主題歌となっております。

・塚地武雅・堤下敦・梶原雄太
 フジテレビのお笑い番組「はねるのトびら」のコントに登場するお笑い芸人3人組のCDであります。番組内では、某アーティストのパロディユニットとして活動しているのですが、本CDはどうやらそのユニットのお笑い部分よりも歌に焦点を当てたものとなっている模様であります。

以上です。それでは、最終回もよろしくおねがいいたします。

ヨシコーイ!ダイジョウブッキョウ!(ダコタ・ファニング風に)

■TYÜNK “TÜNX”

  Uにウームラートが付いているのを見て「とうとうドイツからつんく♂のパロディ・ユニットが出てきたか。テクノの」などと意味不明な読みをしながら我ながら渋い表情など浮かべているお陰で最終回になってしまうのでしょう。最終回まで不勉強な僕はHi-STANDARDというバンドも存じ上げませんでしたし、従ってそれがどれほど素晴らしいバンドで、しかしながら活動休止中となり、ベーシストである難波章浩氏が沖縄に移住し、そこで〈呉我音響〉というアート集団(「音楽のみならず、映像、本、写真、デザイン、ニューメディア、ファッションなど様々な表現活動を行う。その活動フィールドは無限大だ」とプロモキットにあります)を立ち上げ

「なぜ東京を離れ、沖縄に居るのかは、正直俺にも解らないんだ。とにかく新しい人生を始めたかったんだと思う。あと海が好きなんだ。この沖縄の青い海に囲まれて生活してると、自然にいろんなメロディーが浮かんでくるよ。この素敵な感覚を世の中に広めたいんだ。今、TVでは本当に悲しいニュースばかりが流れている。このままではマジでNO FUTUREになっちまう。みんなの心を一つにして、みんなが仲のいい世の中にしようよ。俺は音楽で少しでも世界をハッピーにするつもりさ。その為に沖縄でパワーを貯めていたんだ。この5年間は、俺にとってものすごく大きな経験だった。今とにかく充実しているよ。早くみんなに俺の新しい音楽を感じてもらいたい。TYÜNKとして再び新しいスタートラインに立った気分だよ。 純粋な文化が社会を良くするんだ。文化をリードするのは常に音楽なんだ。いい音楽がみんなをつなぐのさ」

という素晴らしいメッセージを我々に投げかけるに至る経緯に関しては全く存じ上げませんでした。書籍版「CDは株券ではない」は「ORANGE RANGEの本かよ」という程にORANGE RANGEを高く評価しているのですけれども、難波氏は沖縄に移住し、青い海に囲まれて凄まじいばかりのエネルギーを注入されたとしか思えません。

何しろ、難波氏のメッセージはこれだけではありません。最終回に相応しく。と言えば良いのか、本作のプレスキットの文字量は、当連載2年間で採り上げさせて頂いた総てのプレスキットの中で最もマッシブでナンバーワンに濃厚な物です(頁の枚数ではELTの“ソラアイ”が一番でしたが、熱量では本作のそれを越える物はありません。中込智子さんというライターの方の文章は特に凄まじく、50文字×50行が2頁! 実に5000文字に渡る熱烈な物で、途中〈60行改行無し〉という、文字の塊のようなシャーマニズムがびっしりと炸裂しています。紙が真っ黒!!)。前段で引用したメッセージは表紙をめくった第3頁に掲げられた物。第2頁にはこうあります。以下全文を引用します(手抜きじゃないですよ。一文字ずつ書き写してるんだから!)

「1970年年代(ママ)後半、パンクロックは生まれた。ロックという武器を用いてシステムへの不満をぶちまけた。若者はいつも純粋だった。でも大人はわかってくれない。若者はいつの日か反抗するのをやめた。みんなで気持ちを共有する方法を見つけた。それがDANCE MUSICを呼ぶなら(ママ)それでいい。俺は一生ポゴっていくぜ。TYÜNKはみんなをつなぐ。時代はPUNKからTYÜNKへ移行しようとしている。みんなでTYÜNXになろう!!」

んで、前々段のメッセージに続くわけです。因みに最初のメッセージはAKIHIRO NAMBA氏から、そして二つ目のメッセージは難波章浩氏から、そしてプレスキットの最終頁には以下の広告が!

ドラマ「アストロ球団」オープニングテーマ
なんばあきひろand宇宙船地球号“夢よ、舞いおどれ!!/グッドエモーション”

うおー!この発売日と同じ日にこっちも! 後はカタカナを残すのみか! メジャーバンドから自らのインディーズ・レーベル、ドラマ主題歌まで、三つの名前を使いこなすNAMBA/難波/なんば氏の活躍に三倍期待しましょう! 予想数は2万×3で 6万枚(音は〈ロックの人が作ったクラブミュージック〉としか言いようがない、一個ネタの四つ打ちでした)!!!

■山崎まさよし “8月のクリスマス”

  当連載で採り上げさせて頂いたアーティストの皆様の中でも〈ベスト歌唱力賞・男性部門〉を槇原敬之氏と最後まで競り合った上で1票差で勝ち取るであろう山崎氏ですが、両者の歌唱法は武蔵と小次郎の如く正反対。槇原氏が(業界用語で)「ストレートで伸びのあるタイプ」であるのに対し、山崎氏は(業界用語で)「縮緬(ちりめん)ヴィブラートが常にかかっているタイプ」であります。

このスタイルの先達をどこまで辿ると話が分かり易いか。驚くべき事にさだまさし氏であります(分かりずらいだろうよ!若い読者にはよ!)。当連載では、過去、森山直太朗氏のレビューの際に「(特に歌唱力を指して)極端に発達した能力は奇形化し、更に形式化して安定する」と書きましたが、さだまさし氏は「余りの歌のうまさに、歌わずに説法する人になってしまった」という奇形→安定化を辿った偉人/異人として歴史に名を残す方です。

〈クラシック寄り(さだ氏)〉、〈ブルース寄り(山崎氏)〉という若干の偏差はありますが、両者ともフォークに主軸を起きつつ(ギターの弾き語り)、両者とも役者業に進出。その傾向は〈歌手が職業役者に〉というよりも〈時分の音楽観~美意識の完成のために演技にも拡張〉といったもので、さだ氏は“道化師のソネット”という曲に代表される美学で映画に乗り出し、確か御自分でもピエロの扮装をしておりまして、結果は玉砕しました(映画に進出後、さだ氏は説法師への道を決定したと思われます)。僕が山崎氏をテレビや有線などで拝見/拝聴するたびに思っていたのは「この人/チームはさだまさしを知っているのか知らないのか」という、本当にどうでも良いことでした。

御存知の通り山崎氏の俳優業は玉砕どころか大成功を治め、ピエロならずとも精神薄弱者などの、ピュアで天使的な人物を〈手堅い〉と言って良いほどの完成度で演じています(誠実そうな顔をした極悪人。をやれば良いのにな。と思っている方も多いでしょうし、御本人/チームも当然それは企画の中に暖めているでしょうけれども)。

この曲は堂々たる、御本人主演の、大メロドラマ「8月のクリスマス」の、主題歌です。しかも、この映画は、柳の下の三匹目のドジョウで、あります。何せ、主人公の山崎氏は不治の病に冒されながら人生最後の愛を全うするのです。指摘に今更何の遠慮も要らないでしょう。これは「セカチュー」「イマアイ」に続く「ハチクリ」狙いのバリバリ商魂であります。映画のコピーは「君は神様がくれた最高のプレゼントでした」。この文章の〈君〉は他でもない、山崎氏本人なのです。

山崎氏の強度は、こうした「〈そのまんま〉を、一切の衒いなく堂々とやりきりながら、それが図々しくもしたたかにも見えない」という〈ビッグ・ピュア〉ぶりであり、常に一点賭けで顔色一つ変えないその強さは当連載で採り上げさせて頂いた中での〈最高売り上げ数獲得〉である“瞳をとじて”の平井堅氏と双璧を成すものですが、残念ながらこの曲は“瞳をとじて”を試聴した時に感じた「こんなもん売れるに決まってるじゃねえか(笑)」という、文字通り「笑ってしまうほどの売れそう感」はありませんでした。

ドジョウも三匹目になると喰い手は胃がもたれる物なのか?いえいえそんなことはありますまい。OLさんとは何匹でもドジョウを喰う胃袋を持つ購買層の名であります。「本人自ら初めて書いたストリングアレンジ(スタジオで指揮もしたそうです)」は小編成を巧みな書法で書き上げたモーツァルト風の素晴らしい物で、やはり歌唱力がある人は総ての音感(作曲、編曲など)に優れているのだなあと感服せずにいられません。しかし、どうした事でしょう。この曲は〈平歌が淡々と〉、〈サビへの期待感を高めるだけ高め〉そして〈サビが今ひとつ盛り上がらない〉という、実力派がスランプに陥った時の典型例の如き構造を持っており、それをフォローすべく、一箇所だけ出てくる〈オマケ・サビ〉がややアクロバティックな転調を行っている。という図式です。これを「抑制の利いた淡々とした曲」ととるか「中途半端~抜けが悪い~何とかしようとオプションであがいている」ととるか。最終回にしてご祝儀に世辞のひとつも出せれば良かったのかも知れません。僕は後者ととります。

総てを衒いなくさらけ出す山崎氏は、今回も総てを衒いなくさらけだしています。さらけ出していないのは「さだまさしを知っているか(意識しているか。ではなく)、知らないのか」です。長編映画主演第二作。山崎氏の映画進出が玉砕に終わらぬ事を心から祈念致します。4万枚

■塚地武雅・堤下敦・梶原雄太 “言いたいことも言えずに”

  さて、いよいよ当連載の掉尾を飾るアーティストの登場です!ドロロロロロロ(ティンパニー・ロール)じゃじゃーん!!!ってHくん、お笑いの企画モノじゃねえか!(笑)

しかもですね、もうどうせ最終回だからH君からの〈オフレコ業界コーション〉を載せちゃいますよ~。

菊地さま

塚地武雅・堤下敦・梶原雄太なのですが、番組では「○○○○○○○ー」という名前で活動しております。ですが、○○○○により○○○○○○○○の名前は○○○○○○○○○○○○○○す。というわけで、「○○○○○○○○」の○○○○○○○○ん。レビュー中でも別の表現で対応していただけますでしょうか。書きづらいと思われますがなにとぞよろしくおねがいいたします。

ユニット名書いちゃダメだったら何も書けねえじゃねえかよっ(笑)!! “言いたいことも言えずに”って、そういう事かよっ(爆笑)!! 楽曲は似てるけど、歌はそんな似てねえぞ(笑・だから名前使えないのかも)!! っていうか権利の侵害じゃなくて名誉の毀損を対象にした圧力だろどう考えてもコレ(笑)。嘲笑的パロディに法的な規制かけやがって何がラヴ&ピースだウソツキ野郎! なーんてピュアな事いまさら誰も言わないよね(笑)! これは彼等(名前出せない本人の方ね)が「こうした問題にピュアに苦悩する姿」を見せるか、もしくは「電車男」と「はねるのトびら」の連動視聴率アップのためのヤラセの仕掛けだと思いまあ~す(ウソ!)。皆様それではお疲れさまでした~。最後の予想は1億2千万枚でーす! 理由は国民全員が〈言いたいことが言えずに〉いるから!!ってうっわ週刊金曜日みてえー!(笑)バイバーイ!

→ 次ページでは新連載告知を掲載。そちらもお見逃しなく!

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