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第8回 ─ 中西俊夫のニューウェイヴな世界 後半

第8回 ─ 中西俊夫のニューウェイヴな世界 後半(2)

連載
ミ ュ ー ジ カ ル・ジ ャ ー ニ ー
公開
2005/07/20   20:00
更新
2005/08/11   20:52
テキスト
文/丹羽 哲也

99年
Skylab『1999 "Large as Life Twice as Natural"』

「ロンドンにいた時期のレコーディング作品で一番気に入っているアルバム。Skylabはマットの性格もあって最初から破壊されてるから、〈いったん作ってから壊そうよ〉っていうようなことをよく言ってたんだけど、『1999』は僕とか工藤ちゃんのポップな部分とマットのアヴァンギャルドな部分がうまくミックスされていると思う。デヴィッド・バーン初のリミックスも入っているし。ただ『1999』を出したあとゴタゴタに巻き込まれちゃって(註:リリース元のレコード会社EYE Qが倒産した)、そういう意味ではSkylabは不運だったね。そういえば、この時期にロンドンで僕の周りにいた人たちはみんなビジネスセンスがどこかずれちゃってきたところがあった。(註:Pussy Footは現在クローズ。Mo' Waxは買収された)。

99年
Major Force West『Major Force West '93-'97』

「(90年代の作品が音楽的にサイケデリックなテイストのものが多いということについて)中学生の時に初めてお金出した買ったレコードが(ローリング・)ストーンズの『Their Satanic Majesties Request』(67年)だったし、やっぱり67、8年のサイケデリック・ミュージックってぼくの原体験なんだよね。そこに回帰していたのかもしれない。ロンドンに行ってロンゲになってヒゲを伸ばして60年代のロックスターみたいな格好をしたりってことは、子供の頃憧れていたけどできなかったことなんだよ。それをロンドンに行って思いきりやってみた感じ。ロンドンは僕のヒッピー時代だね(笑)」。

99年
NIGO Featuring Tycoon To$h「Kung Fu Fighting」

2000年
Tycoon To$h『Year Of Dragon 2000』

「99年にNIGO君に誘われて“Kung Fu Fighting”で久々にラップをしたんだけど、そこからTycoon To$hの解凍がはじまってきた。その後ファイル(日本のメジャーフォースの親会社)のスタッフから〈TYCOON TO$Hでヒップホップ・アルバムを作りませんか?〉っていうオファーがあって。ちょうどその時にコルグからELECTRIBE(サンプラー)をモニターでもらって〈すごいじゃん、これ!〉って。その勢いだけで作ったアルバムとも言える。全部ELECTRIBEで作ってるからね。これは過度期っていうか、20世紀の最後って感じだね」。

2000年
長い間オクラ入りしていた『DOWN TOWN 81』初公開(PLASTICSも出演)

「当時は誰も本気にしてなかったんだよ。エド(・ベルトグリオ監督)とジャン=ミシェル(・バスキア、主演)が映画を撮っているってことを。〈撮っていい?〉〈うん、いいよ〉ぐらいの話で。だから20年ぐらい経って映画が公開されたのはちょっとびっくりだったね。僕はこの映画に出られて光栄だと思う知らないうちに自分がカンヌ・デビューしていてうれしかった(註:カンヌ映画祭でプレミア上映された)」。

2002年
ザ・ラプチャー「House Of Jealous Lovers」、ポスト・パンク・リヴァイヴァル

2003年
ブレア・ウィッチ・アンド・ブッシュ・オブ・ゴースト・プロジェクト『Blair Witch And Bush Of Ghost Project』

「これは椎名謙介君(註:インディ・レーベル、EMIGRATION JAPANの代表。Pussy Footからソロ作品もリリースしている)とのコラボレーション。最初は〈“Robot”の歌詞が今ぴったりだから一緒にやりませんか?〉って椎名君から話を持ちかけられて、じゃあちょっとジュジュな“Robot”をやってみようってところから始まった。僕はそんなに前面に出ていなくて、音楽的には椎名君におまかせしちゃったけど、けっこう気に入ってるアルバム」。

2003年
ロンドンから11年ぶりに帰国。東京に活動拠点を移す

「僕は重大な決意がなかなかできないタイプだから、帰国も僕の周りの人間が決めた部分が大きいかな。まあ親が高齢になったりしたので、みてあげなきゃっていうこともあって」。

2004年
野宮真貴をヴォーカリストにフィーチャーした中西俊夫の新しいユニット=PlasticSexスタート

「小山田(圭吾)君と以前ロンドンで会った時に、〈好きにやっていいから、何かニューウェイヴっぽいものを一緒にやってみようよ〉っていう話を持ちかけて、2年ぐらい前からセッションしてたんだよ。その後で野宮真貴ちゃんとパーティで会ったら〈PLASTICS再結成するんですって!?〉って言われて。〈いや、そういうわけじゃないんだけど〉って応えたら、彼女は酔っ払っていて〈ヴォーカリストは私しかいないんじゃないですか!〉って言い切られて(笑)」。


83年の中西俊夫のカセット作品「HOMEWORK」オリジナル

2005年
PLASTICS『ORIGATO 25』、『HARD COPY』

「『ORIGATO 25』は何も考えないで選曲して曲順決めてみたんだけど、意外と上手いことハマったね。マーちゃんもすごくいい選曲だってほめてくれた。収録された未発表曲の“Confession”は“Interior”の別ヴァージョン。『Hard Copy』は当時誰も信じてくれなかったけど〈本当にアメリカでウケてるじゃん!〉っていう(笑)」。
 
2005年
中西俊夫『Homework』、MELON『Full Grown』、Plastic Sex『Here Comes SEX Education』

「PlasticSexは気分の中ではPLASTICSに向っているところはやっぱりあるんだけど、当時と比較して今は螺旋階段の25階ぐらい上になっちゃっているわけだから同じにはならないし、セルフパロディをやってもしかたがないからね。(ブライアン・)イーノの『Here Come the Warm Jets』ってあるじゃない? ああいうオモチャっぽい楽しい感じにしたかったんだよ。音楽的にはテクノっぽい曲もあるし、旅行に行ったインドからインスパイアされたこともあって、インド色もかなり出ている。そういえば、スタジオに昔PLASTICSで使ったリズムボックス=CR-78が置いてあったんだよ。あれが出てきたのも大きかった。それこそ25年ぶりの出会いだけど、音出してドンズバだー!って(笑)」。
 
and Future....
「プラセ(Plastic Sex)は今年ライヴもけっこう入れているけど、これからもやっていくつもり。なんとWATER MELONもライヴやるんだよ。8月14日に代官山のUNITで。夏だから納涼でやろうよって。メンバーは玄ちゃん(田村玄一)と豪太(屋敷剛太)と高橋(誠一)君。ベースはナチュカラのクニ君。トミヤン(ヤン富田)も誘ったんだけど〈絶対やだ! そういうのやめようよ〉って(笑)。僕はPLASTICSも再起動させたいんだけどね、オリジナル・メンバーで。チカもマーちゃんも島ちゃんもOKなんだけど、ハジメちゃんがちょっと今キツイみたい。〈リハビリがー〉とか〈人前に出てギター弾く気分じゃないー〉って」。
 
Nuphoria
「自分が音楽家としてこんなに長い間活動するとは思っていなかったね。今はできる限りずっとやっていこうと思っている。こうなったらストーンズ状態みたいな(笑)。自分の中に一貫してあるのは雑食性と好奇心と〈ニューフォリア〉だね。ニューフォリアっていうのは新しもの好きってことで、ライアル・ワトソンの本の題名でもあるんだけど、そこで彼は〈人類がサヴァイヴしてきたのはニューフォリアな部分があるからだ。それがなかったらとっくに絶滅しているだろう〉って言ってるんだよ。ただ、パンクやったり、ハワイアンやったり、ヒップホップやったり、いろんなことやってきたけど、今はいい意味で一周したっていう感じがあるな」。

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