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第63回 ─ ARABAKI ROCK FESTIVAL 05@仙台港 2005年4月29日(金)

連載
ライヴ&イベントレポ 
公開
2005/05/12   11:00
更新
2006/01/19   18:37
テキスト
文/ヤング係長

 フェス好きの中にも、恐らくご存知ない方がいるかと思われるARABAKI ROCK FESTIVAL。仙台という土地柄と4月という時期のおかげか、フジロックやサマソニ、エゾロックなんかと比べると確かに知名度は劣るものがあるわけですが、今年の出演者はとにかく豪華。モンパチ、スカパラ、UA、清志郎、アジカン、銀杏……と、邦ロック好きが泣いて喜ぶメンツが野外4+屋内1の計5ステージに出演! というわけで、bounce.com編集部の東北出身者、ヤング係長がその様子(の一部)をお伝えいたします。

 当日朝会場に入ると、周りは巨大な工場だらけ、最端のステージからは四角く切り取られて窮屈そうな海がちんまりと見える。埋立地特有のだだっぴろさからくる〈殺伐とした感じ〉と、どんよりした天気が相まって、なんとも言えないグレーな空気が漂っている。「雨降ったら困るなぁ」という不安を抱きつつとりあえず会場へ。


つじあやの

 〈TAGAJO(多賀城)〉、〈HATAHATA(鰰)〉、〈TUGARU(津軽)〉、〈ARAHABAKI(荒吐)〉と、東北地方にゆかりのある地名や名産などの名前が付けられているステージを見ながら会場をぶらぶらしている間に雲は上がり、太陽が顔を見せた頃、ステージ〈HATAHATA〉に、トップバッター〈秋田民謡の歌い手〉、藤原美幸が登場。なんの説明もなく「秋田名物八森ハダハダ~」と“秋田音頭”のフレーズが出てきたことにかなり戸惑ってしまったが、ステージに集まった若者たちはおかまいなしにハンドクラップ(!)でバックアップしている。なんともモンドな光景と、それを作り出した若者のテンションに関心しつつ、〈TAGAJO〉ステージに移動するとつじあやのがスタート。ジブリ映画「猫の恩返し」主題歌“風になる”、“桜の木の下”、“クローバー ”、“春風”と続く、まさしく〈春〉な選曲に、寝転がりながら聴いている観客もあちらこちらに散見された。客席にはそんなほのぼのムードが漂っていたものの、バンドの演奏はかなりタイト。ベース、ドラム、チェロ、キーボードという変則編成ながら、リズム隊の安定感は抜群、上モノのバランスもかなり練られているように感じた。「ウクレレの人でしょ?」なんて軽く思っていた人はいい意味で裏切られたはず。


ASIAN KUNG-FU GENERATION

  続いて足を運んだのは、4つ用意された野外ステージの最端〈ARAHABAKI〉(なんで〈ARABAKI〉じゃないんだろう?)ステージ。GO-GO KING RECORDERS feat. 堂島孝平は、流石に演奏にスキがない。攻め所と引き所を心得た各メンバーが、バック・バンドに徹することなくアグレッシヴに自分のプレイをアピールしてくる。負けじと堂島もステージを駆け巡り、最後はバック転まで披露(しかも3回も)。パフォーマンス・シップに満ちたステージを見せてくれた。この頃にはすっかり雲が消え、太陽がガンガン照りつけるフェス陽気に。時間が経つごとにどんどん増えいく観客の数。そのテンションも天気に釣られて上がりまくっているのを感じつつ、ASIAN KUNG-FU GENERATIONを見るため〈TUGARU〉ステージへ。始まる前からとっくにステージには人でびっしり。彼らの人気はここ仙台でも衰えていないようだ。“リライト”、“ループ&ループ”では、開放感のあるパワーポップに釣られてか、大声で合唱する若者達の姿が印象的だった。

  乾燥した地面の砂塵が会場中を舞いまくっているため、呼吸をするだけで体内に砂が侵入するという状況のなか、小休止を経て曽我部恵一バンドへ。この日の曽我部のライヴは、一言で表すと〈破綻〉。ギターのストラップが外れ、何度もギターを落としながらも気にせず爆音でロックしまくる姿。曲を止めてまで観客にコール&レスポンスのやりかたを説明し、再び曲に戻りなにごとも無かったかのように歌に戻る姿。マイクをステージに置いたまま、客席に降りて歌いつづける姿。元サニーデイの田中貴をステージに呼んで無理やり歌わせて満足そうにしている姿。そのどれもがバカバカしく原始的で、完成度もへったくれもない。だが、そこには曽我部の、洗練を拒むロックン・ローラーとしての矜持が見て取れたように思う。

▼文中に登場したアーティストの作品を紹介

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