213!! ロングビーチが誇る三大ザ・ハード・ウェイが帰ってきた!!
再結成なのにファースト・アルバム……。かつてカリフォルニア州ロングビーチのエリア・コードだった番号=213は、デ・ラ・ソウル風に言えば〈213 Is The Magic Number〉……まさに魔法の数字だった。その数字を名乗るグループこそ、西海岸ヒップホップのVIP3人――スヌープ・ドッグ、ネイト・ドッグ、ウォーレンG――の集合体だからだ。しかしながら、その実体を知る者はほとんどいなかったと言っていい。それは各々がデビューするにあたって、グループのほうは有名無実になっていったからである。そもそもの始まりはハイスクールで出会った3人がユニットを組んだことに起因する。MCのスヌープ、シンガーのネイト、DJのウォーレン、彼らは地元の他グループ(そのなかには後のフォーサムやドミノ、トゥインズらもいたという)とバトルを繰り広げたり、デモテープを制作したりしながら活動を続けていった。これは恐らく80年代後半~90年頃までの話だ。
そんな213に転機が訪れたのは、ウォーレンがステップブラザーであるドクター・ドレーにデモテープを聴かせたこと。当時NWAのメンバーだったものの、すでにシュグ・ナイトと組んでデス・ロウを興していた(このへんの経緯は右頁コラムで紹介している「ウェルカム・トゥ・デス・ロウ」に詳しい)ドレーは、まずスヌープのラップに耳を留め、契約を申し出ることになる。そうやって世に出たのが、91年の“Deep Cover”だった。その成功から程なくして初のソロ・アルバム『The Chronic』(92年)の制作に乗り出した時、213の全員がスタジオに集められることとなった。ただ、ドレーは3人をユニットとして出すのではなく、画期的なフロウを持ったスヌープには究極のレイドバック・チューンを、ネイトには教会仕込みのストリート・ソウルを、と各々を適材適所で起用している。スヌープが初のソロ・アルバム『Doggystyle』(ここに収録の“Ain't No Fun”には3人が集合)で成功を収め、デス・ロウを抜けたウォーレンがネイトと組んだ“Regulate”のヒットを飛ばし……と、親しく相互の作品で共演を繰り返しながらも、213は実体化しなかった。それが不意に実現したのが、アナログ盤では〈213復活〉を謳ったウォーレンGの“Game Don't Wait”(98年)だ。ただ、そこからさらにいくつかの共演を経て、またも話は途切れてしまう。213はもはや夢のままで終わる文字どおりのドリーム・プロジェクトかと誰もが思っていた。
が、彼らはついに、3人で、帰ってきた。昨年、スヌープが頻繁にリリースしているミックステープ・アルバムに“So Fly”(モニカ“So Gone”のオケをジャックしたストリート曲)が収められるや、ついに実体化した213への期待が一気に膨らみはじめる。そして今回、その名も『The Hard Way』(ちなみにスヌープはダズ、アイス・キューブと共に3ザ・ハード・ウェイというユニットを計画していたことも)。意外にも西海岸~ロングビーチにベッタリしたモロな出来ではなく、カニエ・ウェストやハイ・テックなどスヌープ人脈の東海岸勢たちを制作陣に迎え、3人がしっくりまったりマイクを交わすという作りは、すっかりオトナになった彼らが余裕を見せつけているかのよう。日本盤のリリースは少し先だが、スヌープ周辺のリリースも集まったこのタイミングでぜひ213気分に浸っておくのも手だろう。
なお、『The Hard Way』にはコメディアンのデイヴ・チャペルによるリック・ジェイムスのモノマネをフィーチャーした“Rick James(Interlude)”なるおふざけスキットがあり、その後にはリックの同名曲をネタ使いした“Mary Jane”も収録されている。リックがこの世を去ったのはもちろんアルバムの完成後ではあるのだが……不思議な因縁を感じさせるではないか。
NATE DOGG
ロングビーチが誇るバリトン・シンガーで、教会育ちのノドを活かして〈フック番長〉の異名を持つオッサン犬。ソロ・アルバムは2001年の『Music & Me』(Elektra)以来ご無沙汰だが、ヒューストンやジェイダキス、モブ・ディープなど今年だけでも客演ヒット多数!!
SNOOP DOGG
西海岸シーン最大のカリスマで、そのユルユルなラップを武器に安定した活動を続ける痩せ型のボス犬。ソロ最新作は2002年の『Paid Tha Cost To Be Da Boss』(Doggystyle/Capitol)だが、全方位的なスタンスで客演も膨大。最近は昔の仲間とモメることも多いが……。
WARREN G
ドクター・ドレーのステップブラザー。213ではDJだったがいまはラップ中心ののんびり犬。ソロ最新作は2001年の『The Return Of The Regulator』(G-Funk/Universal)で、そのレイドバック・トラックには定評があるのだが、あんまり仕事をしない人っぽいな。