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第32回 ─ BOYS BAND

連載
Discographic  
公開
2004/08/19   13:00
更新
2004/08/19   23:32
ソース
『bounce』 256号(2004/7/25)
テキスト
文/出嶌 孝次、冨田 明宏

☆多彩なキャラクターと魅惑のハーモニー、そしてもちろん圧倒的なステージ・パフォーム。彼らこそがポップ・シーンの先導者よ!!☆

 昨今のボーイズ・バンドの源流を辿れば、86年に登場した〈ストリート発〉の王子様集団、ニュー・キッズ・オン・ザ・ブロック(以下、NKOTB)に行き着く。彼らは女の子たちの熱狂と絶叫と失神で迎えられ、現在に続く〈モテない男の嫉妬と妬みの時代〉を到来させた。誤解を恐れずに続けると、彼らと同時期に活躍した光GENJIからSMAP、TOKIO、V6らが続くように、バックストリート・ボーイズやロック・バンド・スタイルのハンソン、ソロ活動が華やかなジャスティン・ティンバーレイクを擁するイン・シンクらの登場、となる。もちろんUKだって黙っていないわけで、〈NKOTBへUKからの回答〉といわれ、あのロビー・ウィリアムスも在籍していたテイク・ザットが下地を作り、ウェストライフらが登場。まさに世界同時多発だったわけだ。今はバステッドのような新しい形の〈ストリート発〉を体現するボーイズ・バンドまでが登場し、〈次は何が!?〉的な楽しさにドキドキさせられっぱなしである。(冨田)

NEW KIDS ON THE BLOCK
『Step By Step』
 Columbia(1990)
ボストンの街角でラップに興じていた5人組が、ニュー・エディションを送り出した鬼才=モーリス・スターの手引きでアイドルに変身。本作は絶頂期に残した3作目。全米チャートを制した表題曲などのダンス・ポップ以上に、スタイリスティックス風からドゥーワップ調まで青臭さを滲ませたスロウ曲にこそ彼らの魅力がある。組曲的な展開を見せる“Tonight”など実験的な曲もよろしい。NKOTB改名後に消滅するも、ジョーダン・ナイトらはソロでカムバック。(出嶌)

98°
『Revelation』
 Universal(2000)
LAで結成された4人組。モータウンからのデビュー当初は伸び悩んだが、ラテン・ブームに乗ったヒット曲“Give Me Just One Night(Una Noche)”を含むこの3作目は、全世界で500万枚超のセールスを記録。清潔感のあるハーモニーはボーイズ・バンド随一で、〈白人版ボーイズIIメン〉的な見方にも頷ける。現在は活動休止中で、リーダーのニック・ラシェイはソロ・デビュー……というか、それ以上にジェシカ・シンプソンの旦那としてお茶の間でブレイク中!(出嶌)

BACKSTREET BOYS
『Millennium』
 Jive(1999)
ミレニアム前後のボーイズ・バンドを爆発的に牽引した5人組。92年の結成以降、苦労を重ねての本3作目でついに大ブレイク。“I Want It That Way”“Show Me The Meaning Of Being Lonely”など絶頂期のマックス・マーティンによる楽曲群は、大味だけどスキのない〈スタジアム・ポップ〉と呼びたい鉄壁の完成度。そんななかにあるジョーのカヴァー“No One Else Come Close”も見落とし厳禁。そんな彼らも現在は長いお休みに突入したまま……。(出嶌)

*NSYNC
『Celebrity』
 Jive(2001)
ミッキーマウス・クラブ出身のジャスティンとJCを中心にオーランドで結成された5人組。97年にドイツでデビューし、本国に逆輸入されてブレイクしてからの歩みは説明不要でしょ。BTによる“Pop”とネプチューンズ製の“Girlfriend”という2大ヒットを擁するこの3作目は、ジャスティン制作のヤング・ソウル路線からJC主導のフリーキーなエレクトロ曲まで、野心的な試みがすべて吉と出た集大成的な傑作。残り3人のためにそろそろ再集結してあげれば?(出嶌)

O-TOWN
『O2』
 J(2002)
スター育成TV番組〈Making The Band〉から登場したボーイズ・バンド界のモンキーズ? この2作目でも安定したチームプレイを聴かせ、デヴィッド・フランク&スティーヴ・キプナー、シェップ・クロフォードらR&B畑職人の手捌きも奏功。顔のバタ臭さに反して耳触りはスムースです。ジョージ・マイケル“Careless Whisper”を引用した曲はアリとして、マスターP(!)ネタの曲まであるところに、現在のUSポップ・アイドルが望まれる全方位性も見え隠れ。(出嶌)

HANSON
『Middle Of Nowhere』
 Mercury(1997)
オクラホマはタルサ出身、ハンソン3兄弟のデビュー作。ここから“MMMBop”が彗星のように全米チャート首位へと駆け上がった。ダスト・ブラザーズらのサポートも受けつつ、基本がすべて自作自演なのは驚異で、特にリード・ヴォーカル/キーボードの次男テイラー(当時13歳!)は甘酸っぱい歌声とキャッチーなメロ作りに才を発揮。いまはかなりオトナな面構えで、持ち前のポップ・センスはそのままに土臭さを増した近作『Underneath』も力作でした。(出嶌)

TAKE THAT
『Nobody Else』
 RCA(1995)
UKボーイズ・バンドの始祖によるラスト・アルバム。アイドル的人気ばかりが取り沙汰されてきたが、リード・ヴォーカルであり作詞/作曲のほとんどを手掛けたゲイリー・バーロウ(現在はブルーの楽曲を手掛ける)の才能はまさに天才的。なかでもリズム&ブルースやフォークのテイストが漂う“Back For Good”は、当時のシーンを眺めみても突出して素晴らしいバラードだ。グループ内では常に二番手だったロビーさん。現在の活躍から想像できます?(冨田)

BOYZONE
『Where We Belong』
 Polygram(1998)
端整で紳士的なルックスとローナン・キーティングを中心に据えた超甘美なヴォーカル・スタイルでアルバムすべてをUKチャートNo.1に送り込むという、ビートルズ以来の快挙を成し遂げた彼ら。名曲“I'll Never Not Need You”や大ヒット・シングル“Picture Of You”収録の今作は、CDラックから引っ張り出して聴くたびにとろけそうになるほどの恍惚が味わえる必聴盤。現在は活動休止中ながらも、U2と並んでアイルランドを代表する国民的バンドだ。(冨田)

5IVE
『Invincible』
 Arista(1999)
〈テイク・ザット以降〉のボーイズ・バンドのなかでも特に異彩を放っていたのがこいつら。ヒップホップを大胆に採り入れ、ファースト・アルバムでいち早く自分たちのスタイルを確立。〈男性版スパイス・ガールズ〉なんて言われ方もしてましたっけ(笑)。今作はセカンド・アルバム。クイーンのブライアン・メイも参加した“We Will Rock You”の清々しすぎるカヴァーで世界中は騒然! 大ヒットとなりました。のちに突然の解散でファンは呆然!(冨田)

WESTLIFE
『Turnaround』
 RCA(2003)
〈UKボーイズ・バンド第二世代〉の代表、ウェストライフ。ベスト・アルバム発表後の今作は、〈お前ら、お涙ちょうだいバラードばっかりか!〉と言われてきたイメージを覆す、まさに〈Turnaround=方向転換〉な意欲作! なかでもオープニングを飾るバニー・マニロウのカヴァー“Mandy”と、続く“Hey Whatever”は生まれ変わった彼らの魅力が濃縮還元された必聴曲! ヴォーカル・グループである以上に、良質なポップ・グループであることを世に示した傑作。(冨田)

BLUE
『One Love』
 EMI(2003)
ほとばしる色気と、どこか憂いを帯びたようなメンバーの顔つき、そして歌うのはセクシーでスムース・グルーヴなR&Bとくれば、クラッとこない女子はいないだろう。もちろん女子だけでなく、今作で共演したエルトン・ジョン卿や、槇原敬之もブルーの魅力に酔わされてしまったご様子。本格的な成功を収めた今作で、UKボーイズ・バンドの新しいスタイルをシーンに刻み込むが、故に孤独な戦いを強いられることになる。モテる男はつらいのよ!(冨田)

BUSTED
『A Present For Everyone』
 Universal(2003)
現在UKで爆発的人気を誇るポップ・パンク・バンド、バステッド。しか~し! みなさんはこいつらの本質を見誤ってはいないだろうか? 確かに女の子ウケの良いルックスではあるが、“Crushed The Wedding”のおバカで下品な妄想や、“Air Hostess”での愉快痛快なジョークの数々は、思い出しただけで胸を焦がすような甘酸っぱい思春期のドキドキを、追体験させてくれる最高の楽曲だ。これからはより正当な評価を期待したいところ。(冨田)