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第21回 ─ 〈CDは株券ではない〉急遽出張版、野本かりあ『KARLY』の売上枚数を大胆予想!

連載
NEW OPUSコラム
公開
2004/08/05   18:00
更新
2004/08/05   20:19
ソース
『bounce』 256号(2004/7/25)
テキスト
文/菊地 成孔


 皆様、こんにちは。bounce.comで連載〈CDは株券ではない~菊地成孔の今月のCDレビュー&売上予想〉を持たせていただいております菊地成孔と申します。今回、あの小西康陽氏直々のオファーによって、出張版としてこちらのコーナーにお邪魔させていただくことに相成りました。お目汚しをお許しの程。

 小西氏円熟の、いや入魂の、いやいやそんな表現ではとても足りますまい。ここでは敢えて〈鬼気迫る〉と申し上げてしまいましょう。ピチカート・ファイヴを解散して幾星霜。プレスキットには「このレコードを作ることによってようやくピチカート・ファイヴとさよならすることが出来たかも」と、小西氏本人の弁であります。ご本人の〈狂ったほどにグルーヴィー〉なエレキベースをはじめとした、ソフト・ロック~フレンチ・ポップ・フル・オーケストラのアレンジの鉄壁さ、作曲技法の強い独自性(字数制限によって触れられませんが、ここが最も重要な部分です。〈植草甚一の文体をそのまま作曲技法にしたかのような〉と申し留めるしかありません)、ある種の女性像への偏愛。ここにあるのは、一切の自嘲やケレンを廃した、小西氏の個人性・オブセッションが濃密に純化/結晶化した60年代アマルガムです。〈ピチカートにさよなら〉というより〈ヤスハル・コニシ・オーセンティック・リボーン〉である本作が2000年代の購買層にどのように受け入れられるか、予想屋の僕にも今回ばかりはまったくわかりません。付属の写真集は、すべてが〈上半身裸、下半身にはカラー・タイツだけ〉の、〈フェティッシュ〉が地上化される前で時間が止まった、しかしながらフェティシズム溢れた物です。とうとう時間をも止めてしまった小西氏の内的世界にしての最大の問題作は、恐らく商業戦略すらかなぐり捨て、躁鬱病性までもむき出しにして、2万枚。