というわけで、ここでは〈妖精系〉男性シンガーを紹介していきましょう。まずはなんといってもこの人、ドノヴァン。〈イギリスのボブ・ディラン〉としてデビューしながら、ルーツを遡った先に彼が見つけたのはファンタジーという桃源郷。例えば『A Gift From A Flower To A Garden』なんて、サウンドはもとより、アルバム・タイトル、アートワークのすべてを含めて絵本のような一枚。またダンカン・ブラウン『Give Me Take You』も、負けず劣らずヨーロピアンなファンタジー感を打ち出したジャケで有名ですが、内容はさらに室内楽的。触れれば消えてしまいそうな儚さなのです。そしてコリン・ブランストーン『One Year』は、そんな儚さと同時に凛とした空気をも感じさせる一枚。ストリングスとシルキーな歌声が朝靄のように拡がっていく様子は夢のようでもあり、どこかひんやりした空気を感じさせるあたりは、さしずめ〈冬の妖精〉といったところ。そんななかで、ちょっと変わり種なのがケヴィン・エアーズ。ファースト・アルバム『Joy Of A Toy』では早くもファンタジーのなかにも独特のユーモアと実験を盛り込んで、妖精界の奇人ぶりを発揮しているのでした。
▼文中に登場した作品を紹介。